Last Update:2002/07/29
ANGIE WORKSHOP > でじたる雑記 > 2002/07

でじたる雑記  2002/07


2002/07/07 (日) bookmark

ワールドカップサッカーの喧騒が終わって脱力感のある7月だが,個人的には最も楽しみにしているスポーツイベント「ツールドフランス」の季節でもある。約3週間かけてフランスを一周する自転車ロードレースだ。

レースの基本は設定された一般道路のコース(100〜200kmぐらい)を数時間かけて走る個人戦だ。これを毎日くりかえし,トータルのタイムで総合優勝者を決める。ツールの面白さは,何といっても個人戦でありながらチームで戦う点,そしてライバルでありながら時には協力しあう構図であろう。

自転車レースなのであくまで自転車を動かすのは各個人の力だ。ただ,平均時速40〜50km/hぐらいで長時間走るレースなので,空気抵抗との戦いになる。前を走る選手のすぐ後ろにつけると,風圧が減るために楽に走れるのだ。バイクや自動車のレースにおけるスリップストリームと似たようなものだ。複数の選手が順番に先頭で風よけとなり,これを交代しながら進むことで,単独で走るよりもずっと速く走れることになる。これがチームで戦う理由である。

1つのチームは9人構成で,1人のエースと8人のアシストという役割になる。アシストはエースを勝利に導くための風よけになるわけだ。エースが総合優勝者となってもアシスト勢にはその名誉は与えられない。一見不合理ではあるが,アシストはあくまでエースを勝たせるのが仕事である。そしてアシストの中で頭角を現してきたものが次の世代のエースになっていくという仕組みだ。

しかし実際には総合優勝を狙えるチームは数えるほどしかない。大多数のチームは総合優勝は最初から無理だと分かっている。そういうチームにとっては,毎日の1つのレース(ステージ)に勝つことが目標となる。実際,ツールのステージを1つ勝つことも非常に大きな名誉であり,世界中から注目される。若くて才能のある選手はステージレースを制することで名前を売り,エースに昇格したり強いチームに引き抜かれていくわけだ。

そういう理由から,本来アシストの役割を与えられている選手も,状況によってはステージレースを勝ちに行くことが許されている。通常,レースは全選手がひとかたまりになった大集団で走る。しかし,ステージを取りたいと思った選手は,タイミングを見計らって飛び出し「逃げ」を打つ。この「逃げ」は単独でやることもあるが,通常は数人の選手が協力しあいながら逃げることが多い。この数人の選手は必ずしも同じチームの選手であるとは限らず,むしろ違うチームの選手であることがほとんどだが,協力して順番に先頭交代しながら後方集団を引き離していく。

チームとしてはライバル関係だが,とりあえず目の前のステージの勝ちを狙うという目標は一致しており,そのためにはまず後方集団に追いつかれないように協力しあう方がメリットがあるのだ。十分引き離してゴール近くまで行けば,後はその数人の集団の中での争いになる。その勝負のポイントまでは敵同士が協力しあうわけで,これが実に面白いところだ。

総合優勝のタイトルは過去3年間,USポスタルチームのランス・アームストロングが獲得している。つまり今年は4連覇への挑戦ということだが,有力なライバルも見当たらないためアクシデントがなければまず達成されるだろうと見られている。個人的にはアームストロングの強さ,特に山岳ステージでの圧倒的な強さに大きな魅力を感じているので,またこれが見られるのを楽しみにしている。

2002/07/17 (水) bookmark

ツールドフランスの前半戦が終了した。第10ステージを終わったところで,全体的には大きな波乱は無かったと言える。まず初日のプロローグでは前年チャンピオンのアームストロングが強さを発揮して,さっそくマイヨジョーヌ(総合首位の選手が目印として着る黄色いジャージ)を獲得した。もちろん3週間の間ずっとこれをずっと守ろうとするのは厳しいので,翌日は勝ちに行かずに手離している。そういう意味では別にプロローグを勝つ必要性は無かったとも言えるのだが,これは4連覇に向けて準備は万全だということを宣言するデモンストレーションなのだろう。

翌日の第1ステージでは若いベルトリアーティが残り1kmで逃げてステージを勝ち,マイヨジョーヌも獲得している。その後ザベルがマイヨジョーヌを着るという珍しいシーンもあったが,第4ステージのチームTT以降はこの種目に強いオンセの選手が上位を独占した。このあたりも下馬評通りの展開と言える。

アームストロングを擁するUSポスタルは昨年失敗したチームTTも無難(というかむしろ上出来)に2位でまとめてきた。アームストロングは第10ステージ終了時点で総合首位のゴンザレス・ガルデアーノから26秒遅れの総合2位に付けている。一昨日の個人TTで勝てなかったのは少し意外だったが,全体的には4連覇に向けてきわめて順調に回ってきていると言える。

昨年は序盤のステージで大きなハプニングがあって,主力選手が35分という大差で遅れる事態があったが,結局山岳ステージでアームストロングはこれをひっくり返した。そういう意味では今年の26秒という差は無いに等しい数字だと言える。明日はカテゴリー超級の山1つ+カテゴリー1級の山頂ゴールというコースなので,おあつらえ向きだ。おそらくアームストロングのぶっちぎり独走ゴールシーンが見られるだろう。

2002/07/18 (木) bookmark

WOWOWのアナログ放送の契約をようやく解除した。2000年末のBSデジタル放送の開始と同時にデジタル放送と両方の契約をしていたものだ。アナログの契約を残したのは保険的な意味合いだったのだが,実際問題としてもうアナログデコーダー経由で見ることは無くなってしまっている。アナログ側で見たいと思うSDTV放送も無くはないがほとんどがノンスクランブル枠だったりするし。

実はもっと早く解約するつもりだったのだが,こういう細かい手続きってなんだかんだで忘れてしまってズルズルと続いてしまうんだよなあ。(笑)

2002/07/29 (月) bookmark

ツールドフランスが終了した。前評判通りアームストロングの4連覇が無事達成され,全体的には連覇の途中にありがちな「波乱の無い穏やかなシーズン」だったと言える。そうは言っても細かく見ていくと随所に見どころがあって面白いレースだったことには変わりはない。中でも最大の注目点はポイント賞つまりマイヨベール争いだった。この賞は最も優秀なスプリンターに与えられるもので,昨年まで6年連続でドイチェ・テレコムのエリック・ザベルが獲得していた。しかし今年はついにザベルが若い選手にその地位を追われる結果になったのだ。実際に勝負が確定したのは最終日であり,そういう意味ではザベルもよく頑張ったと言える。新しくマイヨベールを獲得したのは昨年ザベルと争ったオグレディではなく,オグレディと同じオーストラリア人のマキュワンだった。

総合優勝争いという点では,アームストロングはまともに戦えるライバル不在の中で横綱相撲をやっていた。昨年はUSポスタルチームのアシスト勢が不調ということもあってほとんど一人でぶっちぎり独走を繰り返していたが,今年はアシスト勢の調子も良いため,アシスト勢を十分に活用していた。山岳のレースではゴール手前数kmまでルビエラが引いていて,ここからアームストロングが飛び出すのかなと思ったら,さらにそこからエラスにスイッチしてゴール直前まで引くという堅いレースを繰り返していた。アームストロングの実力を考えればここまで堅実なレース運びは必要ないのだが,あえてチームのメンバーを立てるという選択をしたように見える。実際,山岳初日と2日目はできればエラスにステージを勝たせようとしていた。結局オンセのエースであるベロキを引き離すことができなかったので,やむなく最後にアームストロングが勝ちを取りに行ったわけだが。

その後もアームストロングはあえてステージの勝ちは取りに行かないレース運びを繰り返していた。あまり勝ち過ぎると批判されるということを考えての事だろう。また2000年のモンバントゥーでパンターニに勝ちを譲ったことを酷評された(アームストロング自身,過去最大の失敗と言っている)ことを考慮して,今年は最後に仕掛けるタイミングをわざと遅らせているように見えた。彼がいくら超人的な実力があるとは言え,遅過ぎる仕掛けでは当然ながら先頭に追いつくことはできない。こうすることで目立たないように勝ちを譲る走りをしていたと言える。

来年はいよいよ5連覇への挑戦となる。過去ツールを4勝した4人の偉大な選手たちはいずれも4勝では止まらずに5勝している。アームストロングも来年これらの選手たちの仲間入りするのはほぼ確実だろう。その先には前人未到の6勝も見えてくることになる。強力なライバルが不在というのは寂しいことでもあるが,ここまで来たら是非とも新記録を達成して欲しいものだ。


top access