初版:2001/02/22
改訂:2001/02/24
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BSデジタル導入記  −実際に導入した印象−

本レポート前半部ではBSデジタルそのものについての概要を説明しました。後半では実際に拙宅へBSデジタルチューナーを導入して得られた印象や,関連する細かい話題についてレポートします。なお,現時点で拙宅にはD-VHSビデオデッキは導入しておりません(ビクター HM-DH30000の購入を考えていたら発売延期になってしまいました)ので,録画関係についてはアナログ入力のビデオデッキを使った場合についてしか試していません。D-VHSについてはまた機会を改めてレポートしたいと考えています。

CONTENTS
1.BSデジタルとは?
2.BSデジタル放送の内容
3.ハイビジョン映像
4.デジタル音声
5.ラジオ放送とデータ放送
6.電子番組表(EPG)
7.BSデジタルを視聴するには?
8.拙宅のBSデジタル環境
9.チューナーの購入とセットアップ
10.BSデジタルの画質
11.チューナーの操作性
12.予約録画 − アナログ入力ビデオ編 −
13.コピーワンス問題
14.実際に放送を視聴して
15.BSデジタルの今後

nextprev 8.拙宅のBSデジタル環境

拙宅のテレビは松下の初代タウ TH-36FH10です。これは1998年9月に発売されたもので,おそらく松下最後のアナログハイビジョンテレビになるものと思われます。購入した動機は次のようなものです。もちろん購入当時(1998年末)の時点の評価に基づいています。

実は当時はハイビジョンにはそれほど興味を持っていませんでした。一番評価の高いテレビを選んだらたまたまハイビジョンが付いていたという感じです。しかしなまじアナログハイビジョンが映るテレビを持っていたが故に,今になってデジタルハイビジョンと比較してみたいという強い興味が生まれてしまったのも事実です。結局私がBSデジタルチューナーを購入した最大の動機はこれなのかもしれません。

  写真7.拙宅のAV機器
写真7.拙宅のAV機器

拙宅のAV機器をリストアップすると次のようになります。

表9.拙宅のAV機器 (2001年2月現在)
テレビ 松下 TH-36FH10 (初代タウ)
BSデジタルチューナー 松下 TU-BHD100
DVビデオデッキ ソニー DHR-1000 ×2台
S-VHSビデオデッキ 松下 NV-SB900
DVDプレーヤー パイオニア DV-525 (Region 1)
ソニー PlayStation2 (Region 2)
LDプレーヤー ソニー MDP-A30
EDBetaビデオデッキ ソニー EDV-9000
(すでに2年ほど箱に入ったまま)

改めて書き出してみると,テレビとビデオデッキ以外はえらくチープですね。Region 2用のまともなDVDプレーヤーや,AVアンプと5.1chスピーカーの導入はだいぶ前から考えているのですが,なかなか実行している時間が無くて今に至っています。今年こそなんとかしたいものです。[^^;]

なお,上記のAV機器以外にDV編集用として カノープス DVStorm-RT を搭載した自作PCがあるのですが,DV関係の話はまた改めて別の記事で詳しく書く予定なので割愛します。

nextprev 9.チューナーの購入とセットアップ

購入したのは松下のTU-BHD100という型番のチューナーです。9月からの試験放送開始に向けて予約は6月頃から受け付けていましたが,初物に飛びつくべきかどうかで躊躇していました。結局8月中旬に新宿ヨドバシカメラで予約したのですが,購入できたのは9月末でした。それでも注文が殺到する直前に滑り込むことができたのは幸運だったと思います。購入価格は108,000円(税別)でした。

この機種を選んだ理由は以下の3点です。

多くのメーカーにOEM供給している関係かもしれませんが,同じ松下製のテレビを特別扱いするような機能は特に何もありませんでした。付属のリモコンにはテレビ側を操作するための電源,チャンネル,音量などのボタンが付いています(写真8)。しかし,これは当然ながら松下以外のテレビにも対応可能です。これ以外のテレビ側の機能は全く操作できませんので,結局テレビのリモコンと併用する必要性が生じます。もう少し一体的に使えるようになるのかなと思っていたんですが,アテが外れました。

写真8.TU-BHD100のリモコン ※ クリックすると拡大表示します。
  写真右側の7つのボタンがテレビ操作用のボタンです。
写真8.TU-BHD100のリモコン

なお,TH-36FH10のリモコンにも実はBSデジタルチューナーを操作する機能が組み込まれています。これは電源とチャンネルUP/DOWNのボタンだけですが,BSデジタルチューナーより2年も前に出た製品なのにきちんと動作しています(使いにくい位置にあるので結局あまり使いませんが)。

接続

チューナー本体は非常に軽くコンパクトなものです。ただ奥行きが結構ある(28cm)のでTH-36FH10の上の平らな部分に置けるぎりぎりの大きさでした。このチューナーはかなり発熱します。冷却ファンが付いていないという事もあるんでしょうが,数時間電源を入れっぱなしにして筐体上面の温度を計ってみると50℃近くまで達していました。閉じたAVラック等に収納するのは避けた方がよさそうです。ちなみに他社のチューナーはだいたい冷却ファンが付いているようですが,冷却ファンはどうしても騒音を発生しますので,どちらが良いかは評価が分かれる所だと思います。

写真9.TU-BHD100 (左右のフロントカバーを開いた所) 写真10.TU-BHD100の背面
写真9.TU-BHD100 (左右のフロントカバーを開いた所) 写真10.TU-BHD100の背面

配線は意外に面倒でした。とりあえず接続する必要のあるケーブルには次のものがあります。

映像ケーブルはコンポジット映像端子やS端子を使って接続することも可能ですが,これだとSDTVでの表示しかできません(HDTV映像はSDTVにダウンコンバートして出力されます)。HDTV映像を高解像度のまま見るためにはD端子接続が必須となります。

D端子用のケーブルはこのチューナーには付属していないので別途用意する必要があります。TH-36FH10はD端子を装備していないため,色差コンポーネント映像端子へ接続します。D端子→色差コンポーネント映像端子の接続ケーブルは市販されていますが,あまり高級な製品は存在しないようです。一番良さそうなオーディオテクニカ製のAT-DV35Vを買ってきましたが,これも同社のAVケーブルとしてはそれほど上位のグレードではありません。やはりあの安っぽくてインピーダンスもへったくれも無さそうなD端子用に高級ケーブルを作るのは意味が無いんでしょうか。

音声はアナログのステレオ音声端子以外に,光デジタル音声端子が付いています。AVアンプに接続する場合はこちらを使うわけですが,拙宅にはAVアンプがありませんのでとりあえずアナログ接続で使います。

電話線は本レポート前半部で説明したようにユーザーからの上り方向のデータを送るために使います。拙宅では音声用の電話回線と共用しています。チューナーに長めの電話線と分配コネクタが付属していたため,別途何か用意する必要はありませんでした。

以上で配線は終わりです。この他にD-VHSビデオデッキを接続するのであればi.LINK端子にケーブルを接続しますし,D-VHS以外のビデオデッキと自動連携するためのIRモジュールというものもありますが,拙宅ではこれらは使っていません。

配線が完了したら付属のB-CASカードをスロットに挿入し,電源を入れて初期設定を行います。B-CASカードは薄いICカードで,ユーザー情報の管理に使用するものです。なおB-CASカードは初期製品の一部に欠陥品があることが判明し,該当するカードのリコールが行われています。詳しくはB-CAS社のWebサイトの情報をごらんください。

初期設定

TU-BHD100は最初の電源投入時に初期設定のメニュー画面が表示されます。初期設定は次のようにステップが多く手間のかかるものでした。

表10.チューナーの初期設定の手順
(1) アンテナ設定 BSアンテナへの電源供給の有無
アンテナ入力レベルの確認と調整
(2) 電話設定 回線設定(パルス/トーン)
トーン検出の設定
内線設定
電話テスト
(3) 地域設定 都道府県
郵便番号
(4) 接続テレビ設定 ノーマル/ワイド
D端子のタイプ
S端子のタイプ
(5) B-CASカードテスト 付属B-CASカードの動作確認

画面に表示されるメニューをリモコンのカーソルボタンや決定ボタンなどを使って順にこなしていくだけなのですが,かなり面倒でイライラする作業です。コンピュータなどに慣れていない人にはちょっとつらい作業かもしれません。「ほんとにこんなものを一般家庭向けに売るのか?」というのが率直な感想でした。

郵便番号を入力させるのは,だいたいの住所を把握するためのようです。私は都内の練馬区に住んでいるのですが,NHKのデータ放送では練馬区の天気予報がデフォルトで表示されます(写真3)。

写真11.初期設定画面
写真11.初期設定画面

アンテナ入力レベル

初期設定の画面で,アンテナの受信信号レベルを確認するステップがあります。ここでアンテナ入力レベルが十分であるかどうかを確認しなくてはならないのですが,TU-BHD100のマニュアルにはこれがどのくらいの値であれば十分なのかという情報が何故か書かれていません。説明のさし絵としては62を指したものが描かれていますのでこのぐらいが普通なのかなと思っていましたが,実際には40〜50もあれば十分ということらしいです。

拙宅の場合マンションの共同受信アンテナなのですが,アンテナ入力レベルはだいたい52〜58程度の値を示しています。この値は受信チャンネルによって若干異なり,またもちろん天候によっても変動します。普通の雨だとあまり変わりませんが,大雨や雪の時にはかなり下がってしまいます。経験的には40を割り込むと時々ブロックノイズが出たり音飛びが発生するようになり,30を割り込むとブロックノイズだらけで実用に耐えなくなります。1月に大雪が降った日は,盛大にブロックノイズの乗った画面が見られました。

nextprev 10.BSデジタルの画質

ようやく設定が終わり,無事に放送の画面を表示させることができましたので,さっそくBSアナログ放送と画質を比較してみました。試験放送期間のBSデジタルはBSアナログと同じ内容のサイマル放送で,NHKとハイビジョン,WOWOWの合計4チャンネルが放送されています。そこで,それぞれ対応する放送について切り換えて表示させながら画質を比較してみました。

ハイビジョンの画質

この日(9/30)はシドニーオリンピックの最終日の前日で,ハイビジョンでも各種競技を放送していました。周知のとおりNHKはシドニーオリンピックをハイビジョンカメラで撮影しており,世界最高水準の放送機材をふんだんに使って放送を行っています。画質を評価する上ではまさに絶好の素材と言えます。

BSアナログ,BSデジタルの両方のハイビジョン放送画面を交互に見比べてみましたが,結果は一目瞭然でした。圧倒的にBSデジタルの方が高画質です。緻密で輪郭のくっきりした鮮明な映像で,なおかつシュートやリンギングは全くありません。まるで動く写真です。観客席の人々の細かい表情まで見えてくる感じです。もちろんBSアナログハイビジョンもそれなりに高画質ではあるのですが,BSデジタルにくらべると細部がボケた感じがするのは否めません。また,BSアナログでは画面にかぶりついてみると全体にもやもやした粒状ノイズが見られますが,もちろんBSデジタルではこのようなノイズは全くありません。

正直言ってこれほど差があるとは予想していませんでした。解像度という点ではBSアナログもBSデジタルとほぼ同じですから,似たような絵になるのかなと漠然と思っていたのです。しかし現実は大きく違っており,今までこのブラウン管の表示能力を全く使い切っていなかったという事実を思い知らされ,愕然としました。

この画質の差は,技術的にも根拠があるようです。後で知ったのですが,BSアナログ(MUSE方式)ハイビジョンは衛星放送の狭い帯域を使って効率の悪いアナログ信号を送る方式であるため,画質についてかなりの妥協が行われているのだそうです(参考文献)。アナログ的な圧縮技術が使われており,オリジナルの映像よりかなり細部のボケた映像になってしまいます。もちろんBSデジタルもMPEG2というデジタル圧縮技術を使っています。しかしデジタル技術の進歩は,画質をあまり損なわずに効率よく圧縮することを可能にしました。

前にこの初代タウが「おそらく松下最後のアナログハイビジョンテレビになる」と書いたのもこれが理由です。これだけ画質の差があり,なおかつMUSEデコーダーとBSデジタルチューナーのコストがたいして変わらないという現実がある以上,もはや新規にアナログハイビジョンテレビを購入する理由は全く無くなってしまいました。かつては100万円以上したアナログハイビジョンテレビも,技術の進歩によってようやく私のような庶民でもなんとか手の届く所まで価格が降りてきたわけですが,ここに来て静かに表舞台から去って行くことになりそうです。今後は各社ともアナログハイビジョンテレビを新規に発売することはもう無いでしょう。一つの時代が終わったと言えます。

SDTVの画質

一方SDTVの画質ですが,これはどちらもあまり変わらないという印象を受けました。画面にかぶりついて見ると,BSアナログ放送では画面全体にもやもやとした粒状ノイズが見えますが,BSデジタルでは当然これは無くなります。そういう意味では画質が向上しているとも言えるのですが,通常の視聴距離ではこの違いはほとんどわかりません。

もっとも世間では,SDTVについてはBSアナログよりもBSデジタルの方が画質が悪いというのが一般的な評価のようです。雑誌の評価記事でもはっきりとそう書かれていますし,BSデジタルチューナーを購入した知人もほとんどが同様に評価しています。

しかし拙宅で見る限り,明確な差があるようには見えません。いろいろ考えたのですが,どうもこれはタウの表示方式に原因があるようです。この初代タウは480iの映像信号を480pのプログレッシブ映像に変換して表示するいわゆるIP変換の機能を持っており,デフォルトでそれが働いています。映像に一種の加工を施してから表示しているわけで,結果的にそこで画質の差が吸収されてしまっているのかもしれません。

もちろんタウでも480iのまま表示させることも可能です。しかしながら480i表示でも明確な画質の違いはわかりませんでした。聞くところによるとタウの480i表示は純粋なインターレース表示ではなく,一度IP変換した映像から再度走査線を間引いて表示するという処理を行うらしいです。画質の差が明確にわからないのはこのためなのかもしれません。

プログレッシブ方式とインターレース方式

ハイビジョンは1080iというインターレース方式を採用しています。これについては何故いまさらインターレースなんだという感想を持つ方も多いと思います。元々地上波が480iというインターレース方式を採用したのは,昔の貧弱なインフラでもなんとか480ラインの画像を送受信できるようにと考え出された工夫です。しかしインターレースは画面のチラツキや走査線が気になるといった短所があるため,最近の高画質テレビなどではプログレッシブ方式に変換して表示する高度な仕組み(IP変換機能)が取り入れられています。最初からプログレッシブ方式で送出すれば,こんなややこしい仕組みは要りませんし,より高画質になります。

720pというプログレッシブ方式のハイビジョン・フォーマットが後から追加されたのも,このような理由からと考えられます。もちろん理想を言えば1080pが欲しい所ですが,1080pは送受信両方の装置にかなり大きな処理能力を要求してしまうため,今のところ現実的ではありません。

しかし,実際に1080iの画面を見てみますと,あまりインターレースという感じはしないのも事実です。TH-36FH10の36インチ画面で見る限り,走査線は気になりませんしチラツキもあまり感じられません。少なくとも480pと同じ程度にはプログレッシブ的に見えます。もちろんハイビジョン用のIP変換機能を搭載しているわけでもありません。

これは何故なのだろうと考えてみたのですが,どうやら相対的な画面サイズの問題ではないかと思い至りました。従来の480iのインターレース表示でも,14インチぐらいの小さな画面のテレビだと,画面のチラツキや走査線はほとんど気になりません。これらが気になるのは29インチ以上の比較的大きなテレビからです。1080iの場合,画面の画素数は6倍になっていますから,より大きなテレビでも相対的には480iに対する14インチ程度の緻密さになるのではないでしょうか。つまり36インチというブラウン管では最大級の画面も,1080i表示にとっては小さな画面にすぎないのではないかということです。おそらく100インチクラスの巨大なプロジェクター画面等で見て初めてインターレース特有の問題が気になり始めるのではないでしょうか。

もしそうだとすると,1080pはたとえ実現できたとしても普通の一般家庭にとってはほとんど無用のオーバースペックだと言えます。1080iを採用したのはそれなりに正しい選択だったのではないかという気がします。

nextprev 11.チューナーの操作性

BSデジタルチューナーの操作性について気になったことをまとめました。最初の製品ということでまだまだ使いにくさを感じる部分が随所にあります。今後の製品では改善されていくことを期待したいものです。なお,松下TU-BHD100しか触っていませんので,他の機種では多少事情が異なるかもしれません。

ザッピングがやりづらい

BSデジタルチューナーを使ってまず最初に感じるのは,画面が出てくるのが遅いということです。チャンネルを切り換えると,映像や音が出てくるまでに1秒〜数秒の時間がかかります。つまり次々にチャンネルを切り換えながら何が放送されているのか順に見ていくザッピングがやりづらいということです。

これはMPEG2という圧縮方式を採用している以上,仕方のないことなのかもしれません。MPEG2は時間軸方向に差分を作りながらデータを圧縮する方式です。このため,映像を復元するにはある程度まとまった時間幅のデータが必要になります。数秒間データをため込むことでようやく映像が再現できるわけです。もちろん一度再生が始まれば後は連続的に処理しますから,同じチャンネルを映し続けている限り映像が途切れるようなことはありません。つまりザッピングがやりづらい点を除けば実用上は問題になるわけではありません。

一方,データ放送ではBMLというHTMLのようなページ記述言語を使ったデータが送られてきます。仕組みとしてはWebブラウザでWebサイトにアクセスするのと同じような構造です。ページのデータ転送には時間がかかるため,チャンネルを選択してから画面が表示されるまでに数十秒から数分とかなり長い時間がかかります。まるで遅いモデムを使ったインターネット接続でWebブラウザを使っているような感覚です。

さすがにこれではなかなかデータ放送を見ようという気になれません。テレビ放送やラジオ放送に付属するデータ放送なら,待っている間も映像や音声が流れていますのでまだなんとか我慢できます。しかし独立系のデータ放送については,なんらかの高速化が行われない限り未来は非常に厳しいと言えます。

チャンネルのUP/DOWN

BSデジタルのチャンネル番号は3桁の数字になっています。チャンネルの選択には次の4通りの方法があります。

数字ボタンは[1]〜[9]と[0]があり,これを1個押すだけで主なテレビ放送のチャンネルが選択可能です。初期状態では[1]〜[3]にNHKの各チャンネル,[4]〜[9]に地上波キー局系テレビ局の各メインチャンネル,[0]にスターチャンネルが割り当てられています。もちろんこの割り当てはカスタマイズ可能で,ラジオ放送やデータ放送を割り当てることも可能です。しかし数字ボタンは10個しかありませんので,もっと多くのチャンネルを選択するには他の方法を使わなくてはなりません。

3桁のチャンネル番号を入力する場合は,リモコンの「チャンネル番号入力」を押してから3桁の数字ボタンを順に押す操作になります。これは面倒なのであまり使いません。

UP/DOWNボタンによるチャンネル選択はすべての有効なチャンネルを順番に移動します。このため,例えばBS日テレの141,142,143チャンネルについても順に移動して行きます。しかし前述のようにBS日テレなどの地上波キー局系チャンネルの多くはHDTV放送だけを行っており,これら3つのチャンネルを選択しても表示される映像は同じです。つまりUP/DOWNボタンで3回移動する間,同じ番組が表示されてしまいます。

HDTV放送の時はメイン以外の残り2チャンネルはスキップするといった,使いやすい設計にはできなかったのでしょうか? 残念です。

電子番組表(EPG)の画面も同様で,地上波キー局系チャンネルは3つ別々のチャンネルとして並んで表示されます。もちろんHDTV放送ではこれらの中身は同じです。こちらは仕様的に難しいとは思いますが,できれば何か工夫して欲しい所です。

自動アップデート機能とメール

BSデジタルチューナーには,内蔵しているシステムソフトウエアを放送電波を介して自動的にアップデートする仕組みが搭載されています。最近のパソコンソフトにはネットワーク経由で自動アップデートを行うものがありますが,それと似たような仕組みです。

TU-BHD100では,アップデートについて「自動」と「手動」の2つの設定が選択できます。「自動」に設定していると,文字通りアップデートがあるたびに自動で勝手に更新されます。「手動」に設定していると毎回メールが届いて確認を要求されます。確認するとその後のアップデート・データが送られてくる時間帯に自動的に更新されます。実際のアップデートは電源をオフにしたスタンバイ状態の時に行われます。アップデートが終了すると通知のメールが送られてきます。

メールと言ってもBS衛星(チューナー自体?)からユーザーへ一方的に送られてくる通知でしか無く,こちらから逆に送ることはできません。メールは何通か保存して置けるようですが,アップデート通知のメールは確認した翌日には自動的に消去されてしまうようです。

表11.自動アップデート通知のメールの文面

     ダウンロードのご案内

11月6日〜11月24日の間、ダウンロー
ドの試験を行います。
朝10時〜夜10時の間2時間以上リモコン
で電源を切った状態にしておいてください。
自動的にダウンロードします。
その後電源を入れると、結果をお知らせする
メールが届きます。
11/8 10:00〜10:16
11/8 11:00〜11:16
11/8 12:00〜12:16
11/8 13:00〜13:16
11/8 14:00〜14:16
11/8 15:00〜15:16
11/8 16:00〜16:16
11/8 17:00〜17:16
11/8 18:00〜18:16
11/8 19:00〜19:16
  

     ダウンロードの成功

ダウンロードの実行に成功しました。
  

整理されていないメニュー体系

BSデジタルチューナーは非常に多機能な装置です。日常的によく使う機能についてはリモコンに専用のボタンが用意されていますが,それ以外の細かい機能については画面上にメニューを呼び出し,リモコンのカーソルボタンと「決定」ボタンなどを使って操作します。

しかしこのメニュー体系があまり整理されておらず,どこに何があるのか直観的に分かりにくいという印象を受けました。例えばたまに「メールが届いています」という表示が現れるのですが,どこを操作すればメールが読めるのかよくわかりません。正解は「番組ナビ」ボタンを押して表示されるメニューから「インフォメーション」を選ぶとサブメニューに「メール」が出てくるということなのですが,覚えるまでしばらくかかりました。

電子番組表(EPG)の画面も,現時点で放送している番組ならEPG上で選択してダイレクトにジャンプすることが可能ですが,なぜか予約の設定ができません。予約はEPGの画面ではなく,別に用意されている「番組予約」の画面から実行しなくてはならないのです。番組予約の画面も電子番組表には違いなく,単に1チャンネルずつしか表示しないという違いがあるだけに見えます。なぜ分けなくてはならないのか理解に苦しみます。

写真12.電子番組表(EPG)の画面 写真13.番組予約の画面
写真12.電子番組表(EPG)の画面 写真13.番組予約の画面

nextprev 12.予約録画 − アナログ入力ビデオ編 −

前述のように拙宅にはまだD-VHSビデオデッキがありませんので,アナログ入力のビデオデッキで録画する場合についてレポートします。

目障りな画面表示

テレビ放送の各チャンネルを選択すると,最初の数秒間「データを取得中です」という表示が画面左下に現れます。これはテレビ放送に付属するデータ放送のデータを取得中であるという意味なのですが,チャンネル選択直後や電源オンの直後は毎回必ず表示されてしまいます(写真14)。

最初のうちは「オマケのデータ放送があるんだよ」ということをユーザーに意識させるという意味で有意義なものですが,慣れてくれば当然ながらこの表示は目障りなだけです。そこで何も表示しないという設定が無いかと探したのですが,ありませんでした。[^^;]

普通に見ている分には目障りだというだけで済むのですが,問題はアナログ映像端子経由でビデオ録画する時です。当然この目障りな表示も一緒に録画されてしまいます。手動で録画する時は数分前からチャンネルを選択していれば回避できますが,困るのは予約録画の時です。

TU-BHD100では,電子番組表(EPG)を使って録画予約する番組を設定します。これは簡単で便利な機能ですが,問題なのはこれ以外に録画予約を設定する方法が無いことです。つまり手動で開始時間と終了時間を設定して予約するということができないのです。このため,予約録画の時は数分前からチャンネルを選択しておいて「データを取得中です」の表示を消しておくという対策が使えません。

では目的の番組の直前の番組も併せて予約しておけば良いのではないか,と考えて試してみたのですが,なんと番組が切り替わるたびに「データを取得中です」が表示されてしまいました。どうやら瞬間的にチャンネルを選択しなおした扱いになってしまうようです。

結局アナログ映像端子経由で予約録画する限り,番組の最初の数秒間にこの表示が録画されてしまうのは避けられないようです。実際に使うユーザーのことをあまり考えてない不親切な設計と言えます。

また,TU-BHD100ではチャンネル番号と現在時刻を画面右上に表示させておくことができます(写真15)。これは時計代わりに使うときなど便利な機能で,電源をオフにしてもちゃんと直前の状態を覚えています。しかし,予約録画をやる前にこれをオフに設定しておかないと,やはりこの表示が一緒に録画されてしまうという問題が発生します。もちろんちゃんとオフに設定するのを忘れなければいいんですが,こういうものはどうしてもうっかり忘れがちです。しかも「データを取得中です」と違ってずっと表示され続けるため,失敗した時のダメージはより深刻です。

写真14.「データを取得中です」の表示(左下) 写真15.チャンネル番号の表示(右上)
写真14.「データを取得中です」の表示(左下) 写真15.チャンネル番号の表示(右上)

結局のところ,アナログ映像端子経由で予約録画するのは,使いにくくて実用性に欠けると言わざるを得ません。本レポート前半部で「録画をするのであればHSモード搭載D-VHSビデオデッキが必須」と書いたのは以上のようなことが理由です。D-VHSビデオデッキは映像,多チャンネル音声,データ放送などそのチャンネルに含まれる情報を一括してデータストリームとして記録します。このため再生する時にこういった画面表示も自由にコントロールできます。また,i.LINK接続で制御しますので,チューナー側だけで予約設定すればビデオデッキ側も自動的に連動してくれます。

逆にD-VHSがあるからこそ,アナログ映像端子経由の録画に関しては手抜きとも言える仕様になってしまっているとも言えそうです。

スクイーズとレターボックス

アナログハイビジョン対応のW-VHSビデオデッキ(ビクター HR-W5など)を別にすれば,普通のアナログ入力ビデオデッキはHDTVの録画には対応していません。しかしBSデジタルチューナーはSDTVにダウンコンバートした映像をS端子やコンポジットビデオ映像端子に送り出しますので,これを普通のアナログ入力ビデオデッキに接続すれば,画質は落ちるものの録画が可能です。

HDTVの画面は16:9ですので,ダウンコンバートの際には同時に画面を4:3に変換する必要があります。この変換方法にはスクイーズとレターボックスの2種類があり,それぞれ次のように変換します。

写真16.スクイーズ 写真17.レターボックス
写真16.スクイーズ 写真17.レターボックス

スクイーズは情報量をできるだけ落とさないように画面全体を使って縮小します。この結果16:9の横長画面が左右に縮んだ状態で記録されます。再生時はワイドテレビを使って左右に拡大しないと正しい縦横比で表示できません。一方,レターボックスは16:9の縦横比を維持したまま4:3の画面に縮小表示します。このため画面の上下に黒い帯ができてしまいますが,ワイドテレビを用意しなくても普通の4:3画面のテレビで正しく表示ができます。もちろんスクイーズの方が画質では若干有利になります。

TU-BHD100ではこのダウンコンバート出力をどちらにするか選択することが可能です。ただしこれは「初期設定」画面の「接続テレビ設定」によって選択するという非常にわかりにくいものになっています。

接続テレビ設定を「ワイド」にしておくとスクイーズ,「ノーマル」にしておくとレターボックスでS端子から出力されるようです。D端子から出力される信号は自動的に処理されるため,この接続テレビの設定には依存しません。このため拙宅ではTH-36FH10というワイド画面のテレビを使っているにもかかわらず,レターボックスで録画をするために接続テレビ設定は「ノーマル」に設定しています。

nextprev 13.コピーワンス問題

BSデジタル放送の開始直後,最も大きな話題となったのはこのコピーワンス問題です。すでにさまざまなメディアで報道されていますが,私なりに理解した情報を整理しておきます。

コピーワンスとは?

BSデジタル放送ではコンテンツ供給側の意向により,デジタル録画した番組のコピーについて制限をつけることができます。制限はネバーコピー,コピーワンス,コピーフリーの3段階に分かれています。ネバーコピーは録画自体がまったく許されず,逆にコピーフリーは無制限に録画やダビングが可能というものです。コピーワンスは両者の中間で,放送を録画することだけは許可するというものです。録画したものを再生することは何度でもできますが,デジタルのままダビングしてコピーすることはできません。つまり孫は作れないということです。

なお,コピー2回可といった設定はありません。2回可能なら一度録画した子供から孫が大量生産できてしまうため,実質的にコピーフリーと変わらなくなってしまうからです。

実際の放送では,コピーワンスに設定されているのはWOWOWで時々放送される大作映画にほぼ限られており,あまり多くはありません。大部分の番組はコピーフリーで放送されています。

問題点

コピーワンスに設定されたHDTV放送をHSモード搭載のD-VHSデッキにi.LINK接続で録画します。これをi.LINK経由でBSデジタルチューナーを介して再生すると,SDTVにダウンコンバートされた映像が出力されてHDTV映像での視聴ができません。ただしBSデジタルチューナーを内蔵したハイビジョンテレビを使って再生する場合はHDTV映像のまま表示されます。

※HSモード搭載D-VHSデッキは,ビクター HM-DH30000(およびそのOEM機である東芝 A-HD2000)を除いて,HDTV用のMPEG2デコーダーを搭載していません。このためHDTVでの再生はi.LINK経由でデジタルデータをBSデジタルチューナーに送り,BSデジタルチューナーがデコードして表示する仕組みになっています。現時点ではHDTV用MPEG2デコーダーが非常に高価であるため,このような方式が主流になっています。

原因

さまざまな情報を総合すると,これはHDTVのアナログ出力についてコピープロテクション技術が存在していないために決められた仕様ということのようです。デジタル出力についてはコピープロテクション技術が確立していますが,アナログ出力がコピー無制限ではこれが事実上骨抜きになってしまいます。そこでSDTVへのダウンコンバート出力のみ許可するということにしたようです。

しかしそれでは放送のリアルタイム視聴時にBSデジタルチューナーがアナログHDTV信号を出力しているのは問題ないのか,という疑問が沸いてきます。実はこれは i.LINK 経由でデジタルコピーした回数を問題としているらしいです。コピーワンスの場合 i.LINK 経由で一度コピーしたものはアナログHDTV信号で機器の外部に出力してはならないということなのです。リアルタイム視聴時は,i.LINK を一度も通っていないためこの問題にひっかかりません。

一方,i.LINK 経由でD-VHSデッキで録画したテープについては,すでに i.LINK を1度通っているためこれ以降はアナログHDTV信号での出力は許されなくなります。つまり i.LINK 経由でチューナーに送り返して表示する場合や,HM-DH30000のようにデッキ自体がデコードしてアナログ出力する場合は,HDTVでの出力は許されません。BSデジタルチューナーを内蔵したハイビジョンテレビに i.LINK 経由で送った場合に限って例外的にHDTVで表示できるのは,このようなテレビがアナログHDTV信号を機器の外部に出力する機能を持たないからです。つまりアナログHDTV信号を機器の外部に出力せずにその機器自体で表示するのであれば問題ないというわけです。

コピーワンス問題の経緯

BSデジタルの本放送開始時に,WOWOWは「エンド・オブ・デイズ」や「ディープ・インパクト」など最近の大作映画をいくつも獲得してハイビジョンで放送しました。コンテンツ供給側の意向に沿ってこれらはコピーワンスで放送されたわけですが,録画して見ようとしたユーザーから早速この問題が指摘されて大騒ぎになりました。

ユーザーにとっては,せっかくHSモード対応D-VHSビデオデッキを買って録画したのにハイビジョンで見られないというのはあまりにも理不尽な話です。しかも一律にダメなのではなく,BSデジタルチューナー内蔵テレビを購入したユーザーだけは優遇されているわけですから,とても納得できるものではありません。

WOWOW側も少なくとも営業サイドや上層部は,この問題が発生することを事前に認識していなかったようです。あわててWebサイトやパンフレットの記述を訂正してこういう制限があることを告知し始めました。

同じWOWOWでも技術サイドの人間や,BSデジタルチューナー各メーカーの技術者はこの問題が発生することをあらかじめ把握していたようです。しかし実際にコピーワンスのハイビジョン放送がこれほど多く行われるとは予想しておらず,問題を軽く考えていたようです。

コピーワンス問題はこういうさまざまな思い違いが生み出した悲劇であると言えそうです。

問題解決への動き

コピーワンス問題はHiVi 誌や AV REVIEW 誌でも大きく取り上げられ,当然ながら業界でも大きな問題ととらえて対策が協議されています。したがっていずれなんらかの解決方法が提示されるのではないかと思われます。

この2月初旬からビクターHM-DH30000の出荷が限定的に開始されたようで,予約していた人には届いたという報告が見られるようになりました。いち早く入手したユーザーからは,このHM-DH30000ではコピーワンスの番組を録画したものもD端子からHDTVで出力されているという報告がされています。今のところ何が起こっているのかはっきりしませんが,なんらかの対策が行われたのかもしれません。

未確認ですが解像度を少し落として出力することで決着したらしいという情報もあります。いずれにせよ,もう少し経てば解決への方向性が見えてくるのではないかと思われます。

nextprev 14.実際に放送を視聴して

技術的な話ばかり続いてしまいましたが,放送されている内容についてもここで個人的な感想を述べておきたいと思います。

NHK (有料放送)

BSデジタルの旗振り役であるNHKは,さすがに豊富な資金力と映像資産を生かして充実した番組を放送しています。特にハイビジョン版の「NHKスペシャル」である「ハイビジョンスペシャル」がなかなか素晴らしい映像で楽しめます。先日もマイアミの水中地下洞窟を調査するドキュメンタリーが放送されていましたが,あまりにも美しく神秘的な映像に我を忘れて見入ってしまいました。

BSアナログのハイビジョン実用化試験放送(BS 9ch)は,これまでNHK以外に時間帯によっては各地上波キー局が番組を放送する相乗り編成になっていました。しかしBSデジタルの開始と同時に,これはNHK単独のハイビジョンチャンネル(BSデジタル103chのサイマル放送)に生まれ変わっています。BSデジタルでは各地上波キー局がそれぞれ自前のハイビジョンチャンネルを持ったため,相乗りの必要性が無くなったということですね。昨年までBS 9chでの夏の甲子園中継はNHKではなくテレビ朝日が独自に制作していたのですが,今年はどうなるのでしょうか。

NHKのBSデジタルは有料放送ですが,受信契約はBSアナログも含めた一括契約で同じ料金になっています。ただしBSアナログの契約をしていても,NHKへ連絡して契約を変更する必要はありますので注意してください。

WOWOW (有料放送)

BS専門局であるWOWOWにとって,BSデジタルの普及にはまさに社運がかかっています。このため本放送開始直後から次のような大作映画をHDTV+5.1chサラウンド音声で放送して盛んにプロモーションしていました。

※アルマゲドンとマトリックスはSDTV素材からのアップコンバート放送。
「ジャンヌダルク」が直前になって版元の意向で急遽SDTV放送に変更されてしまったり,前述のコピーワンス問題が発生したりで必ずしも順風満帆とは行きませんでしたが,それでもDVDを超える高画質で放送された各映画はすばらしいものでした。

WOWOWは時間帯によってSDTVでの3チャンネル同時放送と1チャンネルのHDTV放送を切り換えながら放送しています。3チャンネル放送では,時々193chで試験的にペイパービュー(PPV)放送を行っています。HDTVの時にPPV放送をやると払わない人がWOWOW自体を全く見られなくなりますので,PPVはSDTVでやるしかないわけですね。

WOWOWも有料放送で,BSデジタルとBSアナログは別契約になります。BSアナログからの移行者には割引サービスがありますので,とりあえず私は両方契約しました。しかし無駄なので来年からBSアナログは止めようかと考えています。

BSジャパン

テレビ東京系ですので地上波の系列局が少ない分しがらみも少なく,比較的意欲的にいろいろな放送を行っています。地上波の夕方に放送されている各アニメ番組もほぼ全部をこちらでも放送しています。テレビ東京系のアニメが見たくても見られなかった地方在住の人にとっては福音と言えるかもしれません。1月から開始された「地球少女アルジュナ」は定時枠としては初のハイビジョン制作アニメ番組となりました。

深夜枠では,一昨年テレビ東京で放送された「十兵衛ちゃん −ラブリー眼帯の秘密−」をデータ放送付きで再放送していました。多分に実験的な試みですが,データ放送ではあらすじや登場人物の紹介などが表示されていました。

BS日テレ,BS-i,BS朝日,BSフジ

それぞれ地上波キー局系ですが,こちらは全国ネットが完備している関係から系列局への遠慮があるようです。国内のどこに住んでいても見ることができるBSデジタル放送は,インターネットによる各種商品のメーカー直販と構造が似ています。小売店である地方ローカル局を中抜きして直接コンテンツを配布することが可能になったわけで,必然的に軋轢が発生します。

そういうわけからか,これらの局で放送している番組はどうもぱっとしません。もちろん地上波に比べて視聴者数が圧倒的に少ないために広告収入が稼げず,番組制作費に制約が発生するという理由もあるのでしょうが。将来的にどうなるのかわかりませんが,もしかすると数年後にはBSデジタルから撤退する局が出てくるかもしれません。

スターチャンネル (有料放送)

契約していないため私は見ていませんが,基本的にはCATVやCSで放送している映画専門のスターチャンネルと同じ内容のようです。BSデジタルのテレビ局としては唯一SDTVのチャンネルしか保有していませんが,480pでの放送を積極的に行うなどSDTVの範囲内で可能な限り高画質が得られるように気を配っているということです。

ラジオ放送

BSでのラジオ放送というとどうもピンとこない方が多いかと思います。実際には本レポート前半部で説明したように,画面表示を伴う音声主体の放送です。

ミュージックバードとJFNはそれぞれ4つのチャンネルを使って,ジャンルの異なる音楽を放送しています。テレビ番組に飽きた時などなかなかイイ感じです。また,テレビ局系のラジオ放送でも音楽専門と言えるチャンネルがいくつかあります。無料のラジオ放送がこれだけ充実していると,唯一の有料ラジオ放送であるセントギガはかなり厳しい状況にあるのではないでしょうか。

独立データ放送

本レポート前半部で説明したように,データ放送にはテレビやラジオの各チャンネルに付属したものと,独立データ放送とがあります。話がややこしくなるのでそちらでは触れませんでしたが,実は独立データ放送では低ビットレートの動画を放送することも可能です。インターネットではRealPlayerなどを使った動画のストリーミングをサービスしているWebサイトがありますが,それと似たようなイメージで画面の一部に動画が表示されます。例えばch999ではインプレス社が制作しているINTERNET Watch PLUSやPC Watch PLUSが放送されており,DOS/V POWER REPORT誌の編集部の人がPCパーツを解説している動画などを見かけます。

データ放送ではリモコン(写真8)にある4色のカラーボタンも使います。これは画面の作成者が自由に用途を決めることができるボタンで,さまざまな操作に使われます。

独立データ放送は,前述のようにチャンネルを選択してから放送が始まるまでの待ち時間が非常に長いため,残念ながらあまり積極的に見ようという気持ちになれません。今後数年のうちにある程度の淘汰が発生するのは避けられないのではないかと思います。

nextprev 15.BSデジタルの今後

ようやく離陸したBSデジタルですが,今のところそれほど優れた番組が数多く放送されているとは言えません。またチャンネル数が多くなったとはいえ,CSデジタル放送のSKY PerfecTV!に比べれば圧倒的に少ないのが現状です。高画質という優位性はあるものの,いろいろな番組を見たいという一般的なニーズにはCS放送の方が向いていると言わざるを得ないのが現実でしょう。

今年の年末にはそのCSデジタル放送も新しい世代への移行が始まります。いわゆる110度CS放送です。これはBS衛星と同じ東経110度の軌道上に配置した衛星を使ってCS放送を行うもので,電波の来る方向が同じなのでBS放送とアンテナを共用することが可能になると言われています。しかもMPEG2といった本質的な技術では共通する部分も多いため,チューナーもBS/CS兼用機が登場すると予想されています。

さらに数年先になりそうですが,地上波テレビ放送もデジタル放送へ移行することがすでに決定しています。これも基本技術は共通ですので,やはりBS/CSとの兼用チューナーの登場が予想されます。

せっかく高いお金を出してBSデジタルチューナーを購入したのに,わずか数年のうちに次々と大きな変革が押し寄せてくるわけです。まったく人柱そのものですね。(笑) もっともこういう人柱となる新し物好きのユーザーをないがしろにすると普及するものも普及しない,ということは業界の方々も承知しているようで,チューナーの下取り交換サービスといった対策を考えているという噂も聞こえてきます。人柱の一員としてはそのあたりに期待したいものです。

批判的な話が多くなってしまいましたが,それでも私はBSデジタル放送には大きな可能性があると思っています。このまま順調に普及して,高画質の優れた番組が数多く楽しめるようになることを願わずにはいられません。

参考文献

雑誌記事
Webサイト
関連リンク

更新履歴

2001/01/22 初版
2001/02/24 一部の誤っていた情報を修正。

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