コンピュータを使った効率的な情報処理の方法
1999/09/04
コンピュータを道具として使うときの問題点
コンピュータを知的生産のための道具として使おうと考えたときに問題となることがあります。それは、コンピュータの操作を覚えるために多大な時間を浪費し、肝心の情報処理の方がおろそかになってしまうということです。
文章を書いたり、新しい知識を習得したりするためのデータベースとしてコンピュータを使おうと思っても、既成のパソコンのツールでは思うようなことが出来ません。それで、自分でそれを作りたくなってきます。ところが、ツールを作るためには膨大なコンピュータの知識が必要です。結局、ツールをあきらめるか、コンピュータにのめり込むかのどちらかということになってきます。
無限にも見えるコンピュータを操作する知識や技術です。しかし、それに翻弄されないで、コンピュータを知的生産のための道具として活用するためにはどうすればよいのでしょうか。
コンピュータ操作の何が必要か
コンピュータをあまり知らない人もワープロは使うことができるようになります。文章を作成し印刷するという基本的な操作を習得するには複雑に分岐した命令体系を覚える必要はありません。
しかし、処理の内容が細かくなって行けば行く程、コマンドの数が増えて操作のために記憶しておかなければならない知識が増加していきます。
知的生産の道具としてコンピュータを用いる際も同様です。コンピュータの操作の何が必要かを絞り込めば、操作の習得にそう時間をかけなくても思っていることができるのではないでしょうか。
それでは、知的生産の基本的な要件とは何でしょうか。それは、情報の収集・蓄積、情報の検索、知的生産物として情報を創造するという3点ではないでしょうか。
知的生産に必要なコンピュータの操作
まず、情報の蓄積は、電子媒体としてどのコンピュータでも容易に行うことができます。これに伴って発生する作業はファイルの取扱です。ファイルの作成、保存、変更、削除などの操作ができる必要があります。
次に考えなければならないのは、コンピュータをつかった文書編集の知識です。すなわち、エディターまたは、ワープロとしての機能です。エディターを使って文章を作成、修正し、ファイルに保存するための知識は避けて通ることはできません。
さらに、こうやって蓄積したデータを効率的に検索することができなければなりません。データの検索には2通りの側面があります。一つはキーワードを含む文書を捜し出す検索。もう一つはブラウジングです。後者においてはコンピュータはまだ、紙の本にはかないませんが、しかし、できるだけファイルからファイルへ気ままにブラウジングできることが必要です。
最後にそうして蓄積・検索が可能になった情報を文書として出力しなければ成りません。新しく発明あるいは発見した知識はメモの形であるよりは誰が読んでも理解できるしっかりした文章の形にまとめるほうがよいのです。それは、また、自分のその知識への理解度をテストする重要な手段ともなります。
知的生産のためのツール
こう考えて来ると、知的創造を助けるためのコンピュータのスキルについてある程度しぼりこめるとおもいます。
第1に、ファイルを操作するための基本的なコマンド。第2は、エディター、第3に検索のためのツール、第4に文書印刷です。これらの要件を満たすソフトとしては、ファイル操作のためのshellコマンド,エディターのemacs、データの検索のためのgrep、データのブラウジングのためのlynxやw3m、文書出力のためのLaTeX、文書処理のためのPerlやRubyとなります。
これらを使いこなせるようになるのは大変ですが、Linuxの膨大なソフトウエアー群からくらべたらずいぶんと絞り込むことができたのではないでしょうか。それに、それらも、全てのコマンドを覚える必要はないのです。
このホームべージでは、知的生産のためにこれらのツールを利用するための最小限の知識は何かについてまとめてみたいと思います。「まず最小の知識で一応のことをやり遂げたい。複雑なコマンドを駆使して効率をあげるのはその後でも良い」という考え方です。
2015年の環境から
16年前に書いた上の記事は今も変わらず適切だと思います。しかし、コンピュータの環境の方は大きく変わってしまいました。その一番の要因はウェブの検索エンジンの充実と Windows 10 の全文検索が使えるようになってきたことです。上の議論の根幹はどうやって有効な情報の検索ができるかということですが、難しいツールを習得しなくても十分に有効な個人的な情報の整理ができる時代がやってきているといえるでしょう。