使い捨てプログラムの作り方
自分で苦労して作ったツールは、意外に自分では使わないものだ。その時には、必要に迫られて作るのだが、しばらくすると何のプログラムだったかも、どこにファイルがあったかも忘れてしまう。そのプログラムを使う理由がその時だけだったからだ。
一回きりの使い捨てプログラムをサクサクっと作って、結果が出たらプログラムのことは忘れてしまうというのは思いのほかに出番が多いのではないだろうか。Haskell ではこの種のプログラムを簡単に作ることができる。
以下の記事は GHC を使っている。GHC は Haskell Platform のページからダウンロードできる。Linux の場合は sudo apt install haskell-platform でインストールできる。
電卓として使う
前置きが長くなったがとにかく Haskell を動かしてみよう。端末を起動して、コマンドラインから ghci と入力すると、ghc の対話環境が立ち上がる。何か、入力してみよう。
Prelude> 1.78 * 1.78 * 22
69.7048
これは身長から理想体重を計算するプログラムだ。身長178cmのひとの理想体重は69.7kgだ。こういうのは、電卓でできるのでもう少し面倒なのをやってみよう。総コレステロール220、HDLコレステロール40、中性脂肪150のひとのLDLコレステロールの値を計算してみる。
Prelude>> 220 - 40 - (150 / 5.0)
150.0
何のことはない、Haskell のインタープリターは普通の数式電卓として使える。数式電卓として使っても立派に Haskell でプログラムをしていることになる。しかし、それでは芸がないので、Haskell の特徴の一つであるリストの操作をやってみよう。
リストの操作
まず、1から100までの数の和を求めてみる。
Prelude> sum [1..100]
5050
Prelude> sum [1..100] / 100
50.5
1から10までの数の2倍の数のリストも次のようにすれば簡単に求められる。
Prelude> map (* 2) [1..10]
[2,4,6,8,10,12,14,16,18,20]
1から10までの数の平方数はどうだろうか。
Prelude> map (\n -> n * n) [1..10]
[1,4,9,16,25,36,49,64,81,100]
無限リスト
Haskell の特徴のひとつは無限の数を扱うことができるということだ。1からはじめて奇数を列挙してみよう。
Prelude> [1,3..]
[1,3,5,7,9,11,13,15,17,19...
無限に続くので途中でCtr+Cで中断しなければならない。もちろん無限数列から一部を切り取るのは簡単だ、1から始まる奇数の初めの5個を取り出してみよう。
Prelude> take 5 [1,3..]
[1,3,5,7,9]
再帰関数
例題でよく出る階乗の計算は次のようになる。
Prelude> fact 0 = 1; fact n = n * fact (n-1)
Prelude> fact 5
120
あるいはもっと直観的に、
Prelude> product [1..5]
120
フィボナッチ数の計算は次のようになる。
Prelude> fibs = 0 : 1 : zipWith (+) fibs (tail fibs)Prelude> take 10 fibs
[0,1,1,2,3,5,8,13,21,34]
Haskell を使う理由
長くなるのでこれくらいにするが、たいていの用事が一行で済んでしまう。圏論やらモナドやら知らなくてもこれだけでも Haskell で使い捨てのプログラムを作る理由があるのだ。
要するに Haskell にはめちゃくちゃ直観的にわかりやすい部分と、逆立ちしても理解できないような難しい部分とが混在しているようだ。
しかし、使い捨てのプログラムに利用すると割り切ってしまうと、結構便利だし、このタイプ量の少なさでよくこんなことができるなと嬉しくなってしまう。
難しそうで何となく避けていた Haskell だが、部分的な知識でも結構面白いことができるようだ。