超時空物語
メガロード

第6話「フォールド アタック」


 翌日から、任務の合間を縫って、翔二による輝の特訓が始まった。最初は地上における、体力増加訓練であり、始めてから約半月は筋肉痛に悩まされ、バルキリーに乗れる状態ではなく、定期パトロールは翔二が代ったほどである。

 三週間ばかり過ぎ、輝は自分でパトロールに出られるようになった。久々にバルキリーに乗ったとき、輝はそれまでの地上訓練の意味を知ることになる。

「すごい!前にも増して、機体を自由に操ることができるぞ。」

輝は思わず感嘆の声を上げた。
 地上訓練によって、輝は以前の何倍ものGに耐えられるようになったのである。これは、機体の性能の許す限りの動きを可能にし、通常の飛行においては体力に余裕があるので、今まで以上の的確な判断と操縦ができるためであった。

 続いて、訓練はその場を空中に移した。もちろん、地上における基礎訓練は続けなければならなかったのだが、その意義を知った輝には、もはや辛いだけの訓練ではなかった。
 とにかく、連日のように輝は翔二と模擬空戦を操り返した。

「そらそら!どうした、そんなことじや俺は墜とせんぞ。」

翔二は情け容放なく、輝の機体に襲いかかった。二人は時間と燃料が続く限り跳び続けた。


 未沙は、そんな二人を地上から見守ることしかできなかった。そして訓練が終わった後、疲れ切った二人の姿を見るたびに、少しは加減するように忠告しようと思うのだが、二人の満足げな表情を見ると、何も言えなくなってしまうのであった。
 だから未沙は、報告書を提出しに来た二人に一言だけ言った。

「お疲れさま。」

 もっとも、その後クローディアに、

『そこで極上の笑顔を見せてやれば完璧なのにねぇ。』

と冷やかされたものであった。



 輝と翔二の訓練は、およそ三ヶ月ばかり続いた。しかしその間にも、宇宙移民計画は着々と進行し、ついにメガロード完成まであと三ヶ月という具体的な数字が出るほどになっていた。
 そして、同時に輝や翔二の通常任務が増えたため、二人の模擬空戦の回数もしだいに減っていった。


 そうして一ヶ月ぱかり過ぎた頃、翔二はマクロスのバルキリー隊を二つに分けて、模擬空戦を行なった。もちろん、輝と翔二は敵同士てある。

 模擬空戦は翔二率いる攻撃隊を、輝を中心とする防空隊が迎え撃つという形式で行なわれた。開始そうそう混戦となった中で、翔二のバルキリーが抜け出し、それに輝が突っ込んでいく。奇しくも、翔二がマクロスシティに強行進入してきたときと同じ状況であった。
 またも、翔二は輝の突っ込みを寸前でかわしたが、輝はかわされると同時に機体を立て直し、やはりバランスを失っている翔二の後方に回り込んだ。特訓の成果である。
 その後、翔二を撃墜した輝は、やはり混戦を抜け出してきたマックスとミリア相手に、互角の勝負を行ない、直接撃墜こそ出来なかったものの、味方が駆けつける時間を稼ぎだし、攻撃側を後退させることに成功した。



 メガロードの完成が迫るにつれて、各部門の責任者の仕事はますます増えてきた。輝や翔二も例外ではなかった。輝としても、翔二と個人的にじっくり話がしたかったのだか、時間がそれを許さなかった。
 確かに、バルキリー隊の再編も終了したし、パイロットたちの訓練も、一ヶ月前の大模擬空戦で仕上がったと言っても良かったのだが、彼らには別の任務が与えられていたのである。完成したメガロードを、月のアポロ基地から地球に曳航してくるときの、護衛やその後のパトロールが必要なのである。
 それに加えてマックス、ミリアたちは半月前から、ブリタイと共に外宇宙調査に出ていた。



秒読みが続いていた。
輝は通信スクリーンに映っている未沙に、出発の言葉を告げた。

「あなたもがんばってね。」

未沙のその言葉を最後に、スクリーンはカウント・ダウン表示に切り替わってしまった。


 衛星軌道上まで上がると、そこには惑星探査から帰ってきたばかりのブリタイ艦が待っていた。輝たちは、ブリタイ艦で月まで行くことになっている。行きは半日程度で着くのであるが帰りはメガロードを伴うため、60時間ほどかかる予定であった。


ブリタイ艦に落ち着くと、輝は翔二の部屋を訪れた。

「羽柴少佐、ちょっとお話しがあるのですが、いいですか?」

「ああ、かまわんよ。もっとも、話の内容は聞かんでも判るがね。」

「えっ!」

「聞きたいのは、未沙のことだろう。今なら、どんな答えが返ってきても、しばらくは未沙に会わなくてすむからな。」

「その通りです・・・」

輝は、見透かされて声が小さくなった。

「心配しなくてもいい。今の俺にとって未沙はいい友人だよ。
 それに・・・未沙のほうは、昔も今も俺を友人としてしか見ていない。なぜだか判るか?」

「いいえ。」

「ライバーのことは知っているか?」

「ええ。前に少し聞いたことがあります。」

「それなら、未沙にとって彼がどんな存在かも知っているな。
 俺は未沙と初めて会ったとき、彼女の持っていた影を感じた。自分とは違うものであるが、同じような影をもつ彼女に、俺は惹かれていった。」

「じゃあ、どうして未沙の前から去ったんですか?」

「大きすぎたのさ、ライバーの存在がな・・・
 でもな、俺は未沙の心のすぺてを望んだわけじやない。その一部でも俺に向けてくれれば満足だったんだ。しかし大きすぎるライバーの存在に隠れて、未沙は俺の想いに気づかなかった・・・」

翔二は言葉を切って、目をつぶった。
 そして再び目を開けて続けた。

「でもお前は違う。今の未沙の心の中には、ライバーと同じか、それ以上の大きさでお前が住んでいる。」

輝は言うべき言葉を持たなかった。翔二も何も期待してはいなかった。

 長く短い沈黙が流れた。その沈黙を破るように、非常警報が鳴り響く。輝と翔二がブリッジに駆けつけたとき、そこには難しい顔で腕組みをしたブリタイが立っていた。

「ブリタイ司令。いったい何事ですか?」

「うむ、フォールド反応を観測した。」

ブリタイの落ち着いた態度と話し方のお陰で、二人は事の重大さに気づくのに時間がかかった。

「ゼントラーディ軍でしょうか、監察軍でしょうか?」

輝は心配そうに尋ねた。

「わからん。もしゼントラーディの艦なら、なんとか誤魔化すこともできようが・・・
 とにかく、いつでも発進できるように待機していてくれ。」

ブリタイがそう言ったとき、オペレーターが叫んだ。

「戦艦1、フォールド・アウト。監察軍の艦です!」

艦内は色めきたった。



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