リフトも止まる強い風


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「雨は夜更け過ぎに、雪へと変わるだろう」
そんな歌がよく似合う、五ヶ瀬までの道のりだった。 半ば、希望を。半ば、不安を表していた。

そう。高鍋あたりから降り出した雨は、高千穂、五ヶ瀬、そしてスキー場の ふもとに着いても、まだ雨だった。
「スキー場は雪が降ってるはずだ。でも、もし雨だったら...」
タイヤにチェーンを装着しながら、そんな期待と不安が入り交じる。

しかし、山道に入るとすぐに、雨は雪に変わった。
「わーい、雪だーーー!!」 車の中で、歓声が上がる。
あまりべたつかない、サラサラの雪。最高のコンディションだ!!
ゲレンデは、新雪がこれでもかと積もった、最高の雪質だった。
「シャーーー」という音に加えて、柔らかな感触。体中が喜びに打ちふるえる。
五ヶ瀬スキー場始まって以来、こんなシーズンがあっただろうか!?
ここはどこだ?本当に宮崎県か? 白銀の世界に、しばし、現実を忘れた。

2.最高のコンディション...??

しかし、その感動は、リフト乗り場を見たときに終わった。 土日のように、リフト待ちの行列ができていたのだ。
「おいおい、平日だぞ、なんでやねん?」
理由の一つは、強風のため、リフトが1本しか動いていなかったこと。 雪は充分すぎるほどあるのに、風のせいでリフトが使えないとは、皮肉なものだ。

しかも、風はどんどん強くなり、視界はほとんどなくなった。 風も、すぐやむだろうという甘い考えは、打ち砕かれた。
しまいには、「今日は、第2リフトの営業はしません」と、とどめの場内放送。 リフトに乗っている間も、雪は容赦なくふりかかり、スキーウェアは真っ白(^^)  しかし、1日フリー券を買ってしまった一行は、雪にも負けず、ひたすら滑る。

3.クロボウを探せ!!

やがて、アクシデントは起こった。「12時にロッジ」と約束していたのに、 クロボウ(1年中、皮ジャンと黒いジーンズ姿のため、彼はこう呼ばれている) の姿が見えない。そういえば、時計を忘れたとか言っていた。
しばらく待つが、食堂も混んでいるし、 「13時に再びロッジに集合しよう。クロボウに会ったら伝えるように」と、再び滑る。

しかし、ゲレンデは真っ白。視界はほとんどない(^^;;
クロボウも、ゲレンデでは黒ずくめではないため、なかなかみつからない(^^;  やがて13時になり、3人は再びロッジに集まった。
「クロボウ、いた?」「いや、いない」
「まさか、どこかに突っ込んでるんじゃぁ?」
とにかく、まずは飯を食って、それから本格的にクロボウを探そう、と合意。 3人で食事をする。クロボウ、かわいそうに(^^)
食事をしているうちにクロボウが来るかもしれないと、淡い期待を持っていたが、 結局クロボウは来なかった。

作戦を練る。「クロボウ検索隊」の結成だ。
1人がリフト降り場で待機。あとの2人が、ゲレンデをくまなく検索するということで決定。「クロボウ検索隊」は食事を終え、スタンバイ完了した。
「ちょいまち、トイレに行って来る」と、
遊撃隊員ゆかたんが、いったんロッジに戻った。ご用を済ませ、ふとおもった。
「もしもここでクロボウと入れ違いになったら、笑えるなぁ」
念のため、食堂をもう一度見てまわった。
果たして!! きょろきょろしながらロッジに入ってきたクロボウを発見!

一瞬、このまま見逃してゲレンデを検索したら、どうなるかな、と悪魔のささやきがよぎったが、迷っているうちにクロボウが私を見つけてしまった。
かくして、「クロボウ検索隊」は、その活動をすることなく、解散したのであった。

昼飯を抜いて滑ったクロボウが、その夜、がっつくように晩飯を2人前平らげたのは言うまでもない...