超時空物語
メガロード

第8話 最終回「宇宙の子ら」


 メガロードが完成してから、およそ一ヶ月が過ぎた。必要な作業はすぺて終了して、出発のときを待っていた。
 そして今日、『SDF−2 メガロード』は宇宙移民船一番艦として、進宙式を迎えていた。宇宙に移民しようとする人々を見送るため、各地から大勢の人々か集まっていた。進宙式式典では特別ゲストとして、そして共にメガロードに乗り込む一員としてやって来たリン・ミンメイが、宇宙移民計画の第一歩を祝福して歌っている。見事なカムバックを果たし、今や名実共に大スターとなった彼女である。

 今 あなたの声が聴こえる
 ここにおいでと
 淋しさに 負けそうな わたしに

ミンメイは、この日のために用意した新曲『愛・おぼえていますか』を歌いながら、マクロス進宙式の日に想いを馳せていた。思えば、ずべてあの日から始まったのである。
 あの日、南アタリア島にいかなければ、輝と出会うことも、マクロスで歌手になることもなく、三年前の戦闘で両親と共に死んでいたであろう。
 しかし今、自分はここでこうして歌っている。目の前には、自分の歌を聞いてくれる大勢の人々がいて、輝や未沙が微笑みかけている。そして舞台の下では、カイフンが自ら音響調整をやってくれているのだ。

 おぽえていますか 目と目が合ったときを
 おぼえていますか 手と手が触れ合ったとき
 それは始めての 愛の旅立ちでした

 一条輝はミンメイの歌う姿を、じっと見つめていた。輝もまたマクロスの進宙式に来たことによって、大きく人生を変えられた一人である。そして、ミンメイ。彼女も同様に、輝を変えた要因の一つであった。
 彼女への想いが、彼に軍人への道を選はせ、戦う目的を与えてくれた。もちろん、フオッカーや未沙もその一翼を担っているのだが、なんと言ってもキッカケを与えてくれたのはミンメイであると言える。
 今、こうしてミンメイの歌を聞いていると、死んでいった者たちも、すく側でこの歌を聞いているような気がしてきた。フォッカー先輩、柿崎速雄、・・・そして、羽柴翔二。

 今 あなたの愛信じます
 どうそ私を
 遠くから見守って下さい

 一条未沙もまた、ミンメイの歌声の中に昔を見ていた。彼女は、マクロスの進宙式というより、マクロスそのものによって大きな影響を受けた女性であった。
 もしマクロスが墜落して来ることなく、それによって統合戦争が起きなければ、未沙はライバーに出会うこともなく、まして死別することもなく、平凡な一生を送ったであろう。
 しかし、彼女はそんな仮定の無意味さを知っていたし、それを望みもしなかった。今の未沙には、先日結婚したばかりの輝が、彼女の横に座っている。それだけで十分であった。幸せだった。

 もう ひとりぼっちじゃない
 あなたが いるかち・・・

 ミンメイの歌が終わった。式典会場は割れんばかりの拍手に包まれ、ミンメイはその拍手に手を振りながら、笑顔で応えた。



 今『SDF−2 メガロード』は、護衛機てある新型機『VF−4』を引き連れて静かに湖面を離れた。艦底からしたたり落ちる水滴が日光に輝き、まるで銀の紙吹雪のように舞い降りてゆく。
 マクロスの司令中枢センターでは、スクリーンでこの光景を見ていたグローパル、クローディア、エキセドルらが、敬礼でこれを見送る。

 ブリッジの艦長席から発進の指揮をとっていた未沙の視界にVF−4バルキリーが飛び込んできた。垂直尾翼にはフォッカーゆずりのスカル・マークが見える。輝の機体である。未沙は見えるはずのないコックピットに輝を見たような気がして、しばしの間手を止め、輝に微笑を送った。

 輝は艦尾から艦首に向けて、左舷に沿って飛んだ。そして、ミンメイがいるはずの展望室の横にくると、2,3度翼を振った。次に機首を上げてブリッジをなめるように飛ぶ。しばしブリッジと平行に飛行すると、急上昇をかけた。

 ミンメイは地上を見ていた。眼下の町並みが徐々に小さくなってゆく。突然、特殊ガラスのむこうに一機のバルキリーが現れ、2,3度翼を振った。ミンメイはそのバルキリーが輝の機体であると直感し、思わず手を振って応えた。そのまま輝は上昇していく。



 メガロードは大気圏を離脱した。同時に、衛星軌道上に待機していたブリタイ艦が追従する。そして、大気圏離脱直前に艦内に入った輝たちの代りに、ブリタイ艦からマックス、ミリアたちがメガロードを囲んだ。

 やがて、追従していたブリタイ艦はメガロードから離れていき、マックスたちバルキリー隊もそれに習って、飛び去ってゆく。

 プリタイ艦とそのバルキリー隊が十分離れると、メガロードはその周囲の空間と共に光に包まれた。次の瞬間、メガロードは光の矢となって、宇宙の彼方へと消えて行った。

SO LONG

 宇宙の子らを 引き連れて
 星の彼方の闇の中
 万古に続く戦いを
 めざして飛んだ 運命の失
 淡い陽射しと子守り唄
 若者眠る 母の胸
 愛する日々を 戦い守る
 Will you love me,tomorrow?
 闇を切り裂き 伸びゆく光
 輝き満ちる 日はいつか



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