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| 諒軍曹の姦しき1日 |
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−−−バルキリー格納庫の整備室−−− 鳥坂「ここを・・・こうしたら・・・」 整備員「あれ?鳥坂さん・・・なにしてるんですか?」 鳥坂「あぁ?・・・ああ・・・ちょっと,ブースターの強化と装弾数と火力のアップをな・・・」 整備員「そんなこと・・・言ってくれれば私達でやりますよ・・・ それとも,私達が信じられませんか?」 鳥坂「いや・・・おまえ達の腕は確かなもんだ・・・いつも完璧に仕上げてくれる なに・・・たまには自分の愛機をいじくるのもいいかな と,思ってな」 整備員「へ〜・・・でも気をつけて下さいよ バルキリーはデリケートですからね。ネジ1本でも欠けると飛ばない事がありますから」 鳥坂「ああ・・・でも,もうすぐ終わるから・・・」 −−−(20分後・・・)−−− 鳥坂「・・・・・・」 整備員「あれぇ、まだやってたんですか?」 鳥坂「ああ・・・ちょっとな・・・このネジが余って・・・ これ何処のだ?」 整備員「ああ!ちょっと!これブースターの制御部のネジですよ!」 鳥坂「何か,大変な部分なのか?」 整備員「大変も何も・・・これが無いとあっと,言うまにブースターから火が出ますよ」 鳥坂「げげっ・・・」 整備員「直す自信ありますか?」 鳥坂「いや・・・あまり無い・・・」 整備員「あまりですか?」 鳥坂「・・・いじめるなよ・・・全く無いよ,直す自信なんて」 整備員「初めからそう言えばいいんです・・・私が直しておきますよ」 鳥坂「・・・すまん・・・」 −−−(それから2時間整備員は無駄な時間を疲労したのであった)−−−
整備員「まったく・・・これから鳥坂中尉だけはここにいれちゃいかんな・・・」 −−−軍宿舎−−− 今日は非番の諒軍曹、特に何の予定もなく自分の部屋で机に頬杖をつきながらボ〜ッとしていた・・・・・。
「あ〜〜暇だなぁ・・・・ナナイさんとこは今の時間はいっぱいだろうし、鳥坂さんは今日こそデートに誘うって浮かれてどっかいっちゃったし、まぁ今日も失敗するんだろうけど・・・ 突然ハッとして頭を抱える彼、 「・・・・・って、そ〜いや前の出撃の時に俺ってばまたキレちまったんだよなぁ〜〜!!説教されてるときに彼女も見てたよなぁ、きっと。 変なヤツだって思ってんだろうなぁ、ハァ・・・・。 いい加減この臆病さを直さんと、いつまで経ってもシラフで戦えんぞ・・・。 そういやこの前3人とすれ違ったとき、彼女は俺の視線に気付いていなかったみたいだけど、ヴァネッサさんは俺のほう見て意味深に笑ってたなあ、もしかして気付いてんのか? 彼女に変なこと吹き込んでねぇだろうなぁ・・・・。 もしかして俺に気があんのか?・・・・う〜〜ん、あの知的な感じもいいかも。 ・・・って何言ってんだ俺は!!俺は彼女一筋の筈だろが! あ〜〜あ、何やってんだろ、俺。」 そしてまたしばらくぼ〜っとする。
「ん!いかんいかん、こんな事してても時間の無駄だ。
そう言って彼は、チノパンにTシャツという20世紀末から続く定番ファッションに身をつつみ、フォールドの際に一緒に飛ばされていて彼が拾って修理した、半世紀以上前に作られた古いナナハンのバイクにまたがり、爆音を鳴らして整備場へと向かった・・・。 整備員「あれ?劉影、今日は非番じゃないの? 珍しいな私服で来るなんて、叱られるぜ。」 諒「ま、たまには違反もするさ。ところでおまえ何やってんの?」 整備員「いや、鳥坂中尉がたまには俺もやるって言ってバルキリーいじくってたんだけど、結局めちゃくちゃにして帰っちゃってさ。 俺が直してんだよ。」 諒「あの人らしいな。まあ悪気は無いんだから我慢してやれよ。」 整備員「分かってるよ」 諒「それにしてもあの人ここに来たって事は、今日も駄目だったんだな。」 整備員「何のこと?」
諒「いや、何でもないよ。さて俺もやるか・・・・」 −−−−−4時間後−−−−− バルキリーの下から姿を現し、大きく背を伸ばす。 諒「ん〜〜〜っと!さ〜て帰るか。」 バイクでさっそうと町を走っている、と、見覚えのある蒼い髪が視界に入る。 諒「ん!?あれは!・・・しかも今日は一人だ!よし!今日こそ声を掛けるぞ!」 バイクから降り、バイクを押しながら「彼女」に近付く。 諒「(よし!いけ!劉影!)」 諒「あの・・」 言いかけた瞬間だった。 シャミー「お待たせ〜!!」 ヴァネッサ「ゴメンゴメン遅くなっちゃって」 慌てて言葉をのみ込み、我ながら不自然にバイクを見渡すフリをする。 どうやら「彼女」は気付いてないようだ。 しかし、ヴァネッサは気付いたようで、チラッとこちらを見てかすかに微笑んだ。 キム「遅いわよ!いままで一人で待たせて。変な男にナンパでもされたらど〜すんの!」 この言葉が彼の胸にグサッとつき刺さる。 ヴァネッサ「う〜〜ん、もうチョイ遅かったら危なかったかもねぇ〜〜」 そう言ってチラリとこちらを見る。
彼は慌ててヘルメットを被ってエンジンをかけ、逃げるように去っていったのであった・・。 −−−喫茶店「バリエーション」−−− バイクから降りた青年がヘルメット片手に、アジアの人種独特の漆黒の髪をかき上げ、手で顔をあおぎながら店の中へ入ってくる。 ・・・カランコロ〜ン・・・ アヤ「いらっしゃいませぇ!あ、なんだ、劉影さんか」 諒「なんだはないでしょ、なんだは。一応俺だって客なんだからさぁ」 ナナイ「お、劉影、いらっしゃい。」 諒「ども」 軽く頭をさげてマスターの前のカウンターの席に座った。昼飯時も過ぎてるためだろう、どうやら今は客はいないようだ。 ナナイ「何にする?」 諒「そうだなぁ・・・・喉渇いたしなぁ・・・ジンジャーエールあります?」 ナナイ「ジンジャーエールだな?はいよ。」 諒「それにしてもアヤちゃん、いつもここにいるみたいだけど、彼氏とは遊ばないの?」 アヤ「や、やだ!そんな事ないですよ〜!!」 彼女は彼氏がいるともいないともとれるような曖昧な返事をして、メニューで顔B粕シ分隠しながら俺の肩を叩く。 マスターも平静を装ってはいるが、この話に少なからず興味があるようだ。 もっとつきとめてやろうかとも思ったがこれ以上叩かれるのは嫌なので、やめることにした。 ナナイ「ほい、ジンジャーエールお待ちどぉさん」 諒「あ、ども」 ジンジャーエールを受け取り、静かに飲み始める。 アヤは向こうで、テーブルの上を片付けている そしてマスターはグラスを拭きながら平然と言い始めた。 ナナイ「そういやこの前も例の子たちが来て、なんて名前だったっけなぁ、眼鏡かけたほうの子がおまえのこと、「彼女」に話してたぞ」 マスターの予想外のカウンターパンチに思わずむせ込む。 諒「ゴホッ、ゴホッ、マ、マジですかそれ?」 ナナイ「ま、名前までは出してなかったみたいけどな、話の内容から、大体おまえの事だって分かったよ。しっかし、おまえも鳥坂も進歩がねぇよなぁ。行動パターンもほとんど同じだし」 諒「ほ、ほっといてくださいよ・・・」 ナナイ「ま、そのうちなんとかなるもんさ。」 アヤ「なに?なんの話?」 諒「い、いや、アヤちゃんには関係無い話」 アヤ「な〜によぉ!教えてくれてもいいじゃない!」 ナナイ「実はねぇ、こいつ・・・」 諒「ちょっと!マスター!」 あわてて袖を引っ張る。 ナナイ「冗談だよ」 そういって少々意地悪げに微笑む。 諒「フゥ・・・冗談きついですよ、まったく・・・」 そういってまたジンジャーエールを飲み始める。 アヤ「んで、結局私には教えてくれないのね」 すっかり忘れられてた彼女は一応笑ってはいるが、明らかに怒りの表情が表れている。 諒「ま、また今度ね。ハハハハ・・・」 そう言ってひきつった笑顔を返す。 それからしばらく世間ばなしに花を咲かせたのであった・・・。
そして・・・・・ ・・・・・・カランコロ〜ン・・・・・・ アヤ「あ、いらっしゃいませ〜!」 少女A「は〜い!またいらっしゃいました〜〜〜!!」 小女B「あんた今日もテンション高いわねぇ・・・」 小女C「はいはい、わかったから早く座りましょ」 諒「この声は・・・まさか・・・」 背中の向こうから聞こえる見事なツッコミのコンビネーション、 もとい聞き覚えのある声、まぎれもなく「彼女」と彼女の親友の声である。 ナナイ「噂をすればなんとやら、だな」
突然訪れたこの予想外の状況のなかで、背中にはかいたことの無いような汗が流れているのを感じる諒軍曹であった・・・・。 −−−再び、喫茶店「バリエーション」−−− シャミー「あによー、自分だけイイ子しちゃってェ」 キム「当然よ」 シャミー「あによその態度〜、きにくわなーい!」 ナナイ「・・・」 ヴァネッサ「すいませーん、ホント。さ、早く座りましょ! あたし、イロイロ歩いて疲れちゃった」 ナナイ「・・・いえいえ、どうぞ奥へ」 シャミー「奥でーす!」 キム「バカね」 シャミー「ふんふんふ〜んだ! そんなにバカ、バカ、言わなくってもいーじゃないッ」 (はげしく身悶えする、シャミー) ナナイ「あ、あの・・・」 ヴァネッサ「もう! あなたたち、いーかげんにしなさい!」 シャミー・キム「ハァ〜イ」 (挙手にて応える二人) ナナイ「ふぅ・・・。アヤちゃーん、ご注文取ってきて」
アヤ「ハーイ」 アヤ「ご注文はお決まりですかぁ?」 シャミー「んーとね、んーとね、あたしはぁ・・・」 キム「ミンメイ・スペシャル(*1)でしょ?」 シャミー「あによ、急にぃ〜、ヒトのセリフ取んないでよねー。・・・でも、なんでわかっちゃったワケ?」 キム「誰でもわかるわよ、ねー?」 ヴァネッサ「ふふふ、そーよね?」 シャミー「もう! それじゃ、あたしがタダの単純バカみたいにきこえるじゃないの!!」 キム「ヤダァ、ちがってた?」 シャミー「バカバカバカバカ、オタンコナス! アンタなんか、もう知らないんだからぁ」 (再び、身悶えするシャミー) ヴァネッサ「あたし、アイスオーレ」 キム「しっぶーい。じゃ、あたしはリボン・シトロン」 アヤ「ハーイ。それじゃご注文は、アイスオーレおひとつ、リボン・シトロンおひとつ。それに、ミンメイ・スペシャルおひとつ、と。以上でよろしいですね?」 シャミー「ハーイ、いいでーす!」 キム「なーんだ、結局それなんだ」 ヴァネッサ「ホント、好きなのねー」 シャミー「だぁぁぁぁって、アナタ達とはちがって、まだまだ育ち盛りなんだも〜ン」 (胸を突き出す少女A) キム・ヴァネッサ「・・・」 シャミー「ネエネエ、知ってる?」 キム「知らない」 シャミー「まだ言ってないったらぁ〜、もう! フーンだ、アンタなんかにもう、教えてあげないんだもん!」 ヴァネッサ「なになに?」 キム「もう、ヴァネッサったら、甘やかしちゃダメでしょーが。・・・ま、一応聞いたげるけどさ?」 シャミー「やっぱり聞きたいんじゃなーい!!」 ヴァネッサ「あたし、聞きたーい。キムは聞かなくてもいいみたいだし、いいじゃないの」 キム「そんなこと、ひとっことも言ってないじゃん!」 シャミー「そーよねェ、まあ、外野はほっといてェ、アタシ達だけで盛り上がりましょー!」 ヴァネッサ「そうしましょー!」 キム「なんで、そーなるのよ!!」 (それを後目に話し出す少女A) シャミー「あのね、あたしも最近知ったんだけどさぁ、レーダー室のユキって、道ならぬ恋、にハマってるんだって! しかも、現在進行中!」 ヴァネッサ「うっそ〜!」 キム「誰と?!」 シャミー「えっへん、聞いて驚くナ。それが、あのマース中隊リーダーのブランメル中尉なんだって!」 ヴァネッサ「ちょっと〜!」 キム「妻子持ちじゃない?!」 (セリフを分け合うキム・ヴァネッサ) シャミー「言ったじゃないの、道ならぬ恋、だって。でもサ、あんなオジサンのどこがいーのかなぁ? やっぱりナニがうまいのかな?」 (パン! パン! パン!) シャミー「・・・いったぁーい、なにすんのよう・・・」 ヴァネッサ「調子乗りすぎ」 キム「当たり前よ」 シャミー「オトナのじょーくだもん!」 (もはやカマトトをも超えた、聖少女A) ヴァネッサ「じゅーねん早い!」 キム「まったく、なに考えてんだか・・・。これで、結構モテるんだから、不思議よねー」 シャミー「不思議じゃないってば!」 キム「オトコどもは、いったいこの娘のどこ見てコロッといっちゃうわけ?」 ヴァネッサ「それこそ、知らないわよ」 (もはやお手上げ、のキム・ヴァネッサ) キム「そういえば、アンタ。ついぞこの前、ブリッジに珍客が来たわよ」 ヴァネッサ「そうそう! 真っ赤な顔して!」 シャミー「誰よ、それ〜?」 キム「この店で、唯一ツケのきかないヒトよ」 シャミー「え?」 ヴァネッサ「ほら! いつもここのマスターたかってる、アレ!」 キム「あー、あ? 園田中尉?」 シャミー「エーッ、園田中尉?誰それ?」 キム「ほら、あの人よ。私たちのことを、よく久美子だの絵里だの薫(*2)だの呼ぶ人よ。」 ヴァネッサ「ああっ。大成さんのことね。」 キム「んっ?なんで名前知ってるの」 ヴァネッサ「な、なんかよく町で会うのよね。」 シャミー「あっ!わたしこないだ、あの人がミンメイスペシャル食べてるの見た!しかも、しかも、おかわりなんかしてたよーっ」 キム「うそーっ。私は超激辛カレー食べてるのみたわよ。」 ヴァネッサ「園田中尉は別の意味でツケがきかないかもね。そーいえば、こないだ娘々でラーメン5人分食べたっていってたし・・・」 キム「んっ!?なんで・・・」 ヴァネッサ「は、話を戻すけど、ホントにこころあたりないの?」 (うろたえぎみに話を戻すヴァネッサ) シャミー「ウン!」 キム「・・・アンタ、もしかして、この話知らないの?」 シャミー「だからぁ、何のことよぉ〜」 ヴァネッサ「有名よ、鳥坂中尉のタダ飯喰らい、って。マスター、あたしたちにまで、注意してくれって」 シャミー「あー! 鳥坂中尉のコト? なーんだ」 (妙に納得顔、のシャミー) キム「なーんだ、って・・・。知ってたの?」 シャミー「だって、中尉にはよく会うもん」 ヴァネッサ「えーっ、何処で?!」 シャミー「ブリッジ前の廊下とか、食堂とか、宿舎の前とかでよくすれちがうもん・・・、それが?」 キム「・・・なんにもわかってない」 ヴァネッサ「キムもね」 キム「え? な、何、ナニよ?!」 (いきなりの攻撃にうろたえるキム) ヴァネッサ「あたしは、ちょくちょく見かけるんだから。・・・ふ〜ん、気づいてないんだ?」 シャミー「なになにー?」 キム「うるさい! で、なんのことよ、ヴァネッサ!」 ヴァネッサ「同じよ、アナタ達」 シャミー「なにが?」 キム「どこが?」 (顔を見合わすシャミーとキム) ヴァネッサ「待ち伏せされてんのよ、二人とも。ま、相手がどっちもシャイだから、声もかけにこないんでしょーけどねぇ」 シャミー・キム「・・・」 (まったく身に覚えのない、シャミー・キムなのであった・・・) ----------------------- ★ ----------------------- 奥の座席からの死角の位置に座る青年は呟いた・・・ 「女3人よれば・・・っていうけど・・・」 そして、それに呼応するかのように、マスターが一言。
「平和だねぇ〜」
*1:ミンメイ・スペシャル ミンメイの髪の色をイメージしたハワイアン・ブルーのソーダのなかに、これまたミンメイの、あの縦ロール(!)部分の髪型をイメージしたアイスクリームを、大きめのグラスにくるくるとデコレーションした、甘党御用達のスペシャルドリンクなのである・・・。 *2:久美子・絵里・薫 「軽井沢シンドローム(作:たがみ よしひさ)」参照(笑) |