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−−−喫茶「バリエーション」−−− 「マスター!おかわり」 俺はマスターのナナイさんにそういいながら、5分前までカレーが入っていた皿を持ち上げて見せた。 「また、ですか〜?食べ過ぎですよ」 すでに慣れた−というより、半分あきれた顔のなないさんと違い、ウエイトレスのアヤちゃんは、差し出された皿を受け取りながらも、心配してくれる。 「ほい、できた。しかし、うちのカレーは中尉に食い尽くされそうだな」 「おっ、いい匂い。大成中尉、今日はカレーですか?」 ナナイさんが俺のスペシャルカレーを差し出したとき、鳥坂中尉が店に入って来てそういった。 「ねっ、中尉。これもらっていい?」
俺の返事もきかずに、鳥坂中尉はすでに山盛りに盛られた皿を、なないさんからひったくっている。 「かまわんよ。全部食べれたらおごってやるよ」 「おごり?やった!」 そういって、鳥坂中尉が一口食べた瞬間、 「・・・・・・!」
鳥坂中尉は声にならない叫び声を上げた。 「しかし、大成中尉も変な人よねぇ。」 笑い転げながら、アヤちゃんがいった。 「ミンメイスペシャルみたいな極甘のものが好きかと思えば、この超激辛のカレーを平気で何バイもたいらげるんだから」 「アヤちゃん!俺の口の中には舌が二枚あって、甘いもの用と辛い物用になってるの。」 「ほう・・・だから平気で人を騙せるのか・・・」 振り返ると、鳥坂中尉が怒りの形相で立っていた。 「あっ、いや、その・・・・」
俺は鳥坂中尉の迫力におされてしまった。 <バルキリー隊、ドリーム少尉。注文の品が届いている。直ちに戻るように。繰り返す・・・> 天の助けか、艦内放送が鳴り響いた。 「この放送は!?」 「全機出撃だ!!」 鳥坂中尉はすぐさま店の入口に向かい、入口で振り返ると叫んだ。 「大成中尉!何してるんですか!?」 「2分遅れる。先に行け!」
俺はそう答えながら、鳥坂中尉が一口だけ食べた、超激辛のカレーの皿に手を伸ばした。 (うーん、軍人の鏡だ) 俺はそう思いながら、あきれるナナイさんとアヤちゃんを後目に、カレーを食べ始めた。
艦内放送からかっきり3分後、俺はバリエーションを後にした。 −−−スクランブルがかかって−−− 鳥坂「あ”〜・・・ひでぇ目にあった・・・」 どうやら先程摘み食いした「バリエーション・オリジナル・激辛カレー」がまだ口の中で居座ってるようだ・・・ 鳥坂「ん〜・・・どこかに甘いものは・・・っと・・・」 一応格納庫を目指しつつ自販器を探している鳥坂 鳥坂「めっけ!ラッキー」 目的のもの(?)を見つけたようだ・・・ 鳥坂「・・・金が足りん・・・」 鳥坂「・・・誰も見てないな・・・」 突然,自販器の下を手で探る鳥坂 鳥坂「あった,あった・・・をを!500円!」 鳥坂「むう・・・甘いもの甘いものっと・・・」 ガチャン! 自販器からジュースが出てくる 一気に飲み干す鳥坂 鳥坂「ん・・・1本じゃ足りんな・・・」 そんなことを言いつつジュースを5本買い足している・・・ 鳥坂「・・・」 鳥坂「ぷは〜・・・ ゲップ 」 鳥坂「さて,もう一つ・・・っと」 そんなことをしている内に5分が過ぎている 鳥坂「あ〜・・・遅刻か〜・・・まあいいや,よくあることだし」 などと開き直っている 鳥坂「しっかし・・・俺これでも本当に軍人かね〜・・・」 と,言いつつケタケタ笑っている
このあと,早瀬大尉に怒鳴られるのを知らずに・・・ −−−喫茶「バリエーション」−−−
唐突に暇になるのは、これサービス業の宿命だ、などと昼下がりの午後2時半すぎ、ひとりの客もいなくなった店内を眺めていた店長とおぼしき男は、しばしの休憩にはいることを余儀なくされた。 「アヤちゃん、休みなよ。あとはやっとくからさ」 すっかり気の抜けた表情を隠そうともせず、店長とおぼしき男はカウンター越しに、自ら面接して即採用し、いまやこの店の看板娘となった少女に声をかけた。 「えー、いいですよぉ。マスターはどうせ今頑張っちゃったら後でバテるんだからぁ、ゆっくり座っててくださいな?」 まるで、歌でも唄ってるかのようにそう答えると、アヤと呼ばれた少女は、肩の上で気持ちよさそうに髪の毛をゆらしつつ、テーブルを拭き始めた。 「ふふふ、マスター。いい娘雇ったなあって、いま思わなかった? ねぇ?」 「ひとのココロを勝手に読むんじゃありません」 平静を装いつつ、マスターと呼ばれた男は答えた。 「ふーん、なんだつまんない。じゃ、なんであたしを雇ってくれたの? やっぱ器量よしのトコロかな?」 彼女の声は、まるで何かに増幅されたように、はっきりと彼に届いた。 「うーん、正直誰でもよかったんだけど・・・」
ウソである。 「うそぉー、ショック! じゃ、あたしがもしかしてこの店のバイト志願者一番乗りってワケですかぁ? ヤダな、そんなの」
少女は、客の残していった艦内広報雑誌を丸めると、返事次第じゃタダじゃおかない! というポーズをとった。 「う、うそだよ、ウソ。もちろん顔よし、声よし、器量よしだからに決まってるぢゃ、ないですか」 年の頃、まだ25歳前後の若いマスターは、客の来る前に彼女の機嫌を直しておくべく、かといって、打算だけではないなにかによって、そう答えていた。 「あ、そ・・・。わかればいいんですけどねー!」 依然、彼女のホコは収まらない。 「まま、ここはひとつ、お茶でも飲んでですね・・・」 マスターは、自分のために作っといたアイスコーヒー(ブルマンオンリーのやつ)をすかさずカウンターに置いた。 「わ、やった! マスタースペシャル!」 マスターは、気に入ったお客にしか、アイスのブルマンは出さないのだ。 「らあああっきぃ! ナナイてんちょー、かあっくイイ!!」 「ハハハ、いやいや、それほどでも」 機嫌のすっかり直ったアヤは、カウンターに座ると、大事そうにコーヒーを飲み始めた。 「ねえ、マスター。やっぱり、こんなにヒマなのって、アレかな。兵隊さん、みんな出撃しちゃったからかな?」 すこししんみりと、彼女は言った。 「うーん、ウチは軍人さんでもってるようなものだからね」
ナナイと呼ばれた青年は、改めて自分の為にコーヒーを入れながらガラス窓の外を、ずっと遠くまで、まるで、その先にあるマクロス艦内の内壁さえも見通すかのような眼差しで、しばらくの間、微動だにせず眺めていた。 −−−−バルキリー格納庫−−−− 「準備いいか!」
俺はそう叫びながら、愛機のタラップを一気に登り上がった。 「ブレード2リーダーより、ガンサイト1へ。発艦準備完了。情況を報せてくれ」 <了解、データを転送します。>
データが転送される間に、格納庫の状況を見回す。 メインパネルのモニターにマクロスを中心とした簡略マップが映し出される。 −かなり、食い込まれてるな。2分早く来てても状況変化はなかったな、こりゃ 俺は頭の中で自己弁護を行いながら、再度無線機に向かって叫ぶ。 「ガンサイト1。ブレード隊、発進許可願います。」 <こちらガンサイト1。敵ポット群が接近中です。しばらくまって下さい。> モニターに映る敵影の動きは、こっちに向かっている。このままだと、格納庫ごとやられかねない。 「了解。ガンサイト1、ブレード隊発進する。」 <ちょっと!園田中尉・・・・> 俺は早瀬大尉の抗議を無視して、無線機のモードをデッキクルーに合わせる。 「エンジン出力を上げる。離れろ!」 逆制動バーニアの出力を調整しながら、徐々にメインエンジンの出力を上げていく俺の耳に、デッキの混乱した会話が入ってくる。
<おい、危ないぞ!>
エンジン出力が十分に上がってから、部下の機体を確認した。 「ブレード隊発進する。ハッチ開けろ!」 <敵ポットが接近中のため、エレベータは使えません。> 「わかってる!メンテナンス・ハッチの方だ!」
若いデッキ・クルーに怒鳴り返しながら、俺はメンテナンス・ハッチが開いていくのを目の端でとらえた。 「ブレード隊発進!」 俺は機首をメンテナンス・ハッチに向けると、逆制動バーニアをカットしながら叫んだ!無線機のモードは戦闘用オールレンジだ。急発進のGに耐える俺の耳に、復唱が返ってくる。
<ファイヤー・ブレード発進!>
コントロール・パネルのモニターには、俺の機体の光点の後方に、4機分の光点が続いている。どーやら、全機発進したようだ。 「!」 俺は一瞬だけ逆制動をかけた後、出力をMAXに上げた。 敵機がグングン近付いてくる。 一直線に敵ポット群に向かう。下手に回避運動を行うと、敵の攻撃に飛び込むことになる。 敵機の攻撃は、俺と後方4機の間を虚しく通りすぎていく。 「よっ、と!」 敵ポット群の手前で、俺はようやく機体をひねり込む。ひねり込みながら、機銃のトリガーを押し込むと、数機の敵機が光の玉と化す。 俺はそのまま機体を敵ポット群が離脱させる。 一撃離脱。これが空戦の鉄則であることは、昔も今も変わらない。再度回り込んで敵を掃討するなんてマネは、どっかの天才にでもまかせておけばいい。 離脱しながら、他の4機の確認を行う。4機とも俺と同様に敵の目前でひねり込みながら攻撃、離脱を行っているよーだ。 ブレード隊か編隊を組み直した後方には、十数個の光の玉が消えていくところだった。マクロスに接近中の敵ポット群は、ほぼ壊滅したようだ。
マクロスから、再びバルキリー隊の発進が始まったのを確認すると、俺達は新たな目標に向かって進路を変えた。
マクロスに帰還した俺は、当然命令無視で発進したことにたいする、早瀬大尉の抗議があるかと思っていたら、大尉はそれどころではないようだ。 「さて、無事生き延びたことだし、娘々にでも行ってラーメンでも食うか。いや、ナナイさんとこで、ミンメイ・スペシャルにしようか・・・」
何にしても、生き残った後は、何を食べてもうまい。 |