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でじたる雑記  2004/02


2004/02/01 (日) bookmark スキーブーツ

今日は神保町の角谷スポーツへスキーブーツを買いに行った。実は前回の岩原ツアーでブーツのバックルが1本壊れてしまったのだ。壊れたのはバックルだけなので修理しようと思えばできない話でもないのだろうが,さすがに買ってから5年経っているのでそろそろブーツ自体の寿命だろう。そういうわけで結局新調することにしたのだ。

角谷スポーツは客の足の形をきちんと調べて,一人一人に最適なブーツを選んでフィッティングしてくれることで昔から有名な店だ。最近はヴィクトリアなどの大手量販店でも同じようなサービスをやるようになったが,やはり年季が違うので安心感がある。

とはいえ,僕の足はいわゆる甲高で太いので,靴の選択肢は少ない。結局以前と同じHEAD製(FR9.5 HEATFIT)になってしまった。それにしてもインナーブーツに熱を加えてフィッテングする方式って昔はヤマハだけだったと記憶しているが,いまやどのメーカーでも普通にできるようになってるんだな。加熱フィッティングをやった後,左だけ少しキツイ感じが残ったので,結局そのまま預けてシェル部分まで調整してもらうことになった。

2004/02/03 (火) bookmark 青色発光ダイオード

青色発光ダイオード(青色LED)を実用化した中村教授が日亜化学工業に対して特許譲渡の対価を求めた裁判で,先週末に200億円の支払いを命じる一審判決が下された。すでにマスメディアでさんざん論評されているのでいまさら僕があれこれ言うことは無いのだが,青色LEDになぜそんな価値があるのか不思議に思う人も多いんじゃないかと思うので一言だけ。

青色が揃ったことにより,信号機や街頭スクリーンのLED化が進んでいるのは周知の通りだが,実はもっと大きな意味がある。青色LEDの技術の延長線上で開発された紫外線LEDというものがあり,これの出す紫外線を蛍光材料に当てると蛍光灯と同じ原理で白色の光ができるのだ。いわゆる白色LEDだ。白色光が得られればこれは照明の用途に使えるようになる。すでに小型の懐中電灯や携帯電話の液晶画面のバックライトなどに使われているが,よりコストダウンが進めばいずれは蛍光灯に取って代わると考えられている。

もちろん今の技術では蛍光灯1本分の照明を白色LEDで作るとおそらく数万円になる。しかしあとはコストを下げるだけという段階に来ているわけで,時間はかかるだろうが,10年から20年もすれば一般家庭でも普通に使われるようになるのではないだろうか。また蛍光灯と違って点光源なので面白い応用も考えられる。例えば部屋の天井に均一に分散して白色LEDを配置することで,天井全体が光るような新しい照明の形も考えられる。

ランプから白熱電球,白熱電球から蛍光灯へと進化してきた照明の,新しい革命的な進化が待っているわけだ。市場規模も数兆円と言われている。つまらない訴訟に研究者が忙殺されるのは人類全体の損失だと思うのだがなあ。

2004/02/04 (水) bookmark DVStormの基板

以前も触れた話だが,カノープスのDVStormには2種類の基板が存在していることがわかっている。切り替わったのはDVStorm2の途中のロットからなので,製品によって次のように基板が異なることになる。

旧型基板 DVStorm-RT,DVStorm2前期
新型基板 DVStorm2後期,DVStorm3

基板上の部品配置は異なっているが,目に見える機能的な違いとしては筐体内部向きのDVコネクタがあるかどうかということだけだと思われていた。ところが,カノープスサポートフォーラムのログ(僕はメール配信で読むようにしている)を読んでいたら,別な点でも機能的な違いがあることが判明した。「DV/ビデオ編集」会議室の38450番から始まるスレッドCanopus Staff D氏が述べているのだが,DVStorm3で追加されたコンポーネント出力ボードはこの新型基板にしか付かないということだ。つまり旧型基板にコンポーネント出力ボードを装着しても動作しないらしい。

道理でDVStorm-RTやDVStorm2からDVStorm3へのアップグレードサービスが無いわけだ。DVStorm2の後期ロットに限定すれば理屈の上ではアップグレードが可能なのだが,「DVStorm2の基板自体はDVStorm-RTと同じものである」が同社の公式見解なのでそういうわけにはいかないのだろう。

もちろん以前も述べたが,コンポーネント出力機能そのものはホビーユーザーにとってはあまり意味の無い機能なので,この違い自体もほとんどのユーザーにとってはたいした問題ではないのだが…。

2004/02/05 (木) bookmark SoftEther

年初からネットワーク・エンジニアの間で話題になっているSoftEtherを自宅と会社のPCに入れてつないでみた。自宅PCを仮想HUBとする構成なので,会社側はproxy経由で外に出て行くだけで特に何も穴を開けていない。

ちゃんとつながるし,自宅のPCから会社のLANに自由にアクセスできてしまうなあ。もちろんレイヤー4でレイヤー2をエミュレートするわけだし,SSLの暗号化も入るのでオーバーヘッドは大きいのだが…。たいしたものだ。

2004/02/08 (日) bookmark The Lord of the Rings

WOWOWで「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔」が放映されたので観た。有名なトールキンの指輪物語を映画化したものだ。僕自身はWizardryやUltimaをApple IIでプレイした程度で,ファンタジーの分野にそれほど傾倒しているわけでもなく,指輪物語も読んだことはない。この映画も以前WOWOWで1作目を放送した時は見逃していた。

今回はmyuuさんのオススメもあって観たのだが,凄く面白い。180分の長篇映画なのだが,あっと言う間に終わっていた。原作の発表からはもう50年経過しているそうだが,時代を超えて愛されている物語というのものはやはり本質的に良いものなのだなと再認識させられた。これだけ有名な作品が今まで映画化されなかったというのは一見不思議だが,実際にこの映画を観れば納得できる。昔の技術ではとうてい不可能な描写が随所にあるからだ。コンピュータ・グラフィックスや映像技術の進化でようやく映画化が可能になったというわけだ。

監督のピーター・ジャクソンはこの作品以前はほとんど無名と言ってもいい監督だった。そのピーター・ジャクソンにチャンスと莫大な制作資金を与えたニュー・ライン・シネマ社会長の決断もたいしたものだ。監督自身はもちろん大の指輪物語マニアだが,おそらくこの会長もそうだったのだろうな。

この「ロード・オブ・ザ・リング」は三部作として制作され,2/14から3作目の「王の帰還」が上映される。WOWOWで「二つの塔」を放映したのはその宣伝の意味もあるようだ。久々に映画館へ観に行くかな…。

2004/02/11 (祝) bookmark トレジャーケース OWL-M5-S27/U2

オウルテックの「トレジャーケース OWL-M5-S27/U2」を昨日買ってきた。これはIDE HDDをUSB2.0に変換して接続する外付けHDDケースだが,HDDを格納する部分に同社製のリムーバブルフレームOWL-MRS27Aが使われていて,対応するHDDカートリッジ(OWL-MRSC27A/30A/32A/42A系)がそのまま使えるというものだ。僕はすでにこの系列のカートリッジを手元に沢山持っているので,この製品はなかなか魅力的に見える。

オウルテックのリムーバブルフレームは互換性の有るものと無いものがラインナップに混在していてわかりにくいが,一番入手しやすいのはこの27A〜42A系のものだ。それぞれの違いはフレームやカートリッジの材質などで,まとめるとこうなる。

OWL-MRS27A/30A/32A/42Aの違い
モデル フレーム カートリッジ 備考
27A ABSプラスチック ABSプラスチック
30A ABSプラスチック ABSプラスチック MO・ZIP対応可能
32A ABSプラスチック アルミニウム合金
42A アルミニウム合金 アルミニウム合金

実はこのOWL-MRS27Aを省略した箱だけの製品(OWL-M5CASE/U2)もあるので,最初はこちらを買ってOWL-MRS42Aのアルミ合金フレームを入れようと考えていた。しかしこのOWL-M5CASE/U2は店頭に在庫している所がほとんどないようだ。取り寄せてもらうのも面倒なので,たまたまビックカメラの店頭にあったOWL-M5-S27/U2を入手してフレーム部分を入れ替えることにした。

アルミ合金フレームにこだわる理由だが,このフレーム自体についている小型冷却ファンがうるさいので,これを止めて使いたいからだ。フレームとカートリッジをすべてアルミ合金の方で揃えれば,スチール製の筐体にHDDの熱を逃がすことでなんとかこの小型ファンを使わずに済むのではないかと考えている。もちろん筐体側にも6cmファンが付いているので完全ファンレスとは行かないのだが,2つよりは1つの方が望ましい。

さて,とりあえず動作確認ということでOWL-M5-S27/U2をそのまま接続して,HDDカートリッジを入れてみた。電源スイッチを入れ,カートリッジのロックをかけるとUSB接続のHDDとしてきちんと問題なく動作している。速度的には読み書き共に23MB/sec.程度でそれほど速くはない。使っているIDE−USB2.0変換基板の性能に限界があるということなのだろうな。まあ多少遅いが十分実用になる速さなので問題ない。

ところが,カートリッジを交換する所でちょっと問題が発生した。単純にカートリッジを交換してキーを回すだけでは,PC側がHDDの交換を認識してくれないのだ。もちろん交換後にOWL-M5-S27/U2の電源スイッチをOFF→ONすれば再度認識するようになるし,PC側の再起動までは必要無いのは確かだが,これはホットスワップというのとはちょっと違う気がする。

よくよく考えてみれば当たり前の結果だ。OWL-M5-S27/U2は汎用のリムーバブルフレームにIDE−USB2.0変換基板を外付けした構造になっている。変換基板の電源は直接供給されているため,カートリッジを交換してキーを回しても変換基板の電源は連動しないのだ。つまり以前,オウルテックのリムーバブルフレームをIEEE1394化した時と全く同じ問題が発生しているわけだ。

そうと分かれば,同じ改造を施すことで解決できるはずだ。というわけでリムーバブルフレームのカートリッジ側に給電している電源ラインに電源コードをハンダ付けして追加し,ここからIDE−USB2.0変換基板に給電するように改造した。狙い通りにキーを回すだけでホットスワップできるようになった。やれやれ。

※もちろん言うまでも無いことですが,改造するとメーカーの保証は無くなります。また失敗して壊したり火事になっても一切責任は取れませんのであしからず。
2004/02/14 (土) bookmark マプラー

スキーブーツの引き取りはなんだかんだで今日になってしまった。夕食はそのまま神保町でヴィクトリアの近くにあるタイ料理屋マプラーへ行ってみた。日本人向けに調整した味付けという印象で,辛さは控えめだがなかなか美味しい。単価が安いのでこれはこれでアリだなと思った。きっと平日のランチタイムは近所のOLさんで混み合うんだろうな。

2004/02/15 (日) bookmark 最強のクライマー 逝く

1998年ツール・ド・フランス優勝者のマルコ・パンターニが死んだ。同年にジロ・デ・イタリアも制していわゆるダブル・ツールの偉業を達成したイタリアの英雄だ。死因はまだはっきりしないが,薬物による事故死もしくは自殺ではないかと見られている。1997年に若いウルリッヒがツールを制した時は,誰もがこれからウルリッヒの時代が来ると思った。しかしその翌年,大方の予想を覆してパンターニがウルリッヒを倒してしまった。平地ではいま一つ精彩を欠くものの,山岳でのパンターニの圧倒的な強さはとにかく深く印象に残っている。1999年からツールはアームストロングが5連覇する時代が来るわけだが,その強いアームストロングと山岳で互角に渡り合うことができた唯一の選手でもある。

近年はドーピング騒ぎに巻き込まれたりいろいろと不運が重なって活躍の場を奪われていた悲劇の選手だ。こんな最期ではあまりにも悲しすぎる。本当に残念だ。

2004/02/18 (水) bookmark フクロライオン

早めに帰宅したら,20時からNHKハイビジョンスペシャルでフクロライオンのドキュメンタリー番組をやっていた。昨年8月に放送された番組の再放送みたいだが,その時は見逃していたので今回初めて見た。フクロライオンというのはオーストラリア大陸に数十万年前まで生息していた大型の肉食有袋類のことだ。肉食の有袋類というと1936年に絶滅したフクロオオカミが有名だが,それよりもはるかに大きく文字通りライオンのような猛獣だったと考えられている。フクロライオンの骨の一部が初めて発見されたのは1850年頃らしいが,これまであまり骨が見つかっておらず,150年もの長い間,どういう動物なのか実態がはっきりしなかった。それが2002年にほぼ完全な形で全身の骨格が発見され,実態の解明が急速に進んでいるそうだ。

番組では2002年に全身骨格が発見された経緯や,長年フクロライオンを研究してきた科学者による特徴の分析などが詳しく解説された。そしてもちろんお約束のCGによるフクロライオンの姿の再現もあった。

それにしても本当に奇妙な動物だ。ネコ科やイヌ科の猛獣と異なり,犬歯はあまり発達しておらず,代わりに前歯が異様に発達した牙となっている。まるで齧歯類のようだ。また前後の足の指も長めで,まるでサルのように親指と他の指で物を掴めるようになっていたらしい。つまり樹上生活に適していたと考えられ,他の動物を樹上からとびかかって襲うといった生態だったのではないかと考えられている。ライオンというよりヒョウに近い生態だったわけだ。

ハイビジョンスペシャルは時々こういう面白いネタをやってくれるから楽しい。

2004/02/19 (木) bookmark x86の64bit化

昨日,intelのPentium 4/Xeonについての64bit拡張に関する発表が行われた。事前にいろいろと噂になっていて,先行したAMDの64bit拡張(AMD64)との互換性がはたしてどうなるのかさまざまな観測が流れた。しかしフタを開けてみるとAMD64互換そのものだった。

自前主義にこだわり続けたintelが他社の作った命令セットをそのまま受け入れるというのは初めてのことだ。もちろんこれはMicrosoftを始めとするソフト業界の圧力があったということだろう。ソフト業界にとっては2つの異なるバイナリを作ってそれぞれをテストし,パッケージ化する無意味なコストの増大は避けたい所だ。またAMDとしても自前の64bitアーキテクチャがintelに追認されたことでAMD64の将来性が保証され,対応ソフトが増えるというメリットが大きい。つまりintel以外のすべての人々にとって歓迎すべきことなのだ。

もちろんintelとしては屈辱的であまり面白くないことだが,市場性を考えた大人の対応ということだろう。また,独禁法上の配慮もあったのだと思う。もし非互換にすればintel方式が主流となり,AMDに大きなダメージを与えることもできるかもしれない。しかしあまりAMDを追い詰めすぎて独占が進むと,独禁法で叩かれることになる。つまりintelにとってはAMDが潰れることではなく,大差の付いた2番手にすぎない現状をそのまま維持することが最も望ましいのだ。かつてMicrosoftがライバル企業のAppleやDigital Researchを支援したのと同じ理由だ。

政治的な話はともかく,技術的な面ではPCの64bit化にどの程度の意味があるのかは疑問がある。確かに大規模なデータを操作するデータベース等のサーバープログラムでは4GBというメモリ空間が手狭になってきているのは事実だが,一般ユーザーが普通に使うアプリケーションでは特に不足しているわけではない。また64bit演算の必要性についてはさらに薄い。

16bit整数の-32,768〜32,767では日常的な金勘定にも困るのは自明なので,CPUの32bit化には必然性があった。しかし32bit整数の±20億という数値範囲ならほとんどの状況で困ることはない。もちろん銀行等で巨大な金額を1円単位まできっちり勘定する場合は必要だが,それは64bitアドレス空間が大規模なデータベース等で必要になるのと同じで,ごく一部のアプリケーションに限定された話だ。それに64bit整数の演算は16bitや32bitのCPUでできないわけではない。単に1命令で高速に処理できるか,複数命令で作ったサブルーチンが必要になるかというだけの違いだ。

また,32bit以下の演算で十分なプログラムに64bit命令セットを使うと,プログラムコードのバイト数が増えてしまうのは避けられない。つまりキャッシュ容量が余計に必要になるという点では性能的なマイナス要素もあるのだ。

とはいえ,マーケティング的には「64bit CPU」というキーワードでなんとなく高速になるような期待を抱かせることができるわけで,それなりに意味があるのだろう。またCADやCG系の用途だと,従来浮動小数点演算を使わなくては計算できなかったものが整数演算で高速にできるようになるというメリットもあるのかもしれない。プログラマの立場から言うと,32bit整数の掛け算でオーバーフローを考えなくて済むのはそれなりに便利かもしれないし。(笑)

そういえば,昔moritan(有名な森田将棋・森田オセロの作者)に会った時に彼が話していた。64bit CPUが使えればオセロの盤面を2ワードで表現できるので,高速な思考ルーチンが作れると。当時はもちろんWindowsも普及しておらず,世の中は16bitのMS-DOSアプリの時代だった。あれから十数年。とうとう64bit CPUがPCで使える時代が来たのか…。

2004/02/20 (金) bookmark Itaniumの未来

AMD64とIA-32eの登場により,とりあえず従来のx86命令セットを単純に拡張した形で64bit命令セットx86-64が使えるようになる。これは80386で32bitに拡張した時とほとんど同じような手法だ。例えばAXレジスタは64bit版では次のようにRAXという名前になる。



8086で定義された16bitのAXレジスタを,80386では32bitのEAXレジスタに拡張した。そして今回は64bitのRAXレジスタに拡張するわけだ。AXレジスタは上下8bitずつに分割してそれぞれを独立したレジスタとして使用できたが,EAXの上位16bitやRAXの上位32bitは独立したレジスタとしては使用できない。もちろん拡張はこれだけではなく,新たに64bit汎用レジスタが8個追加されているし,SSEの128bitレジスタも16個に倍増している。演算命令もいくつか追加されているようだ。

プログラマの立場から見ると,すでに80386の時に似たような拡張が行われているので,今回もどういう風に対応すれば良いのか考えやすい。Cコンパイラ等の言語処理系もとりあえず動くように移植するのは容易だ。もちろんレジスタや演算命令が増えたため,より優れた最適化の手法は異なってくるはずだが,それはとりあえず動くものを作った後でじっくり追い込んでゆけば良い。

こうして見ると,x86-64の最大の利点は既存ソフトウェアの移行のしやすさだろう。もちろんこういった拡張は将来的なCPUの性能向上には不利である。CPUの内部ロジックがやたら複雑になってしまったため,必要とするトランジスタ数が莫大になり消費電力や発熱も増える。結果として高クロック化で性能を上げるのが難しくなるわけだ。intelはもちろんそれを考慮して,x86命令セット(IA-32)とは全く異なるIA-64命令セットを持つItaniumを開発してきた。

ItaniumはいわゆるVLIWと呼ばれるアーキテクチャー(正確にはEPICという改良型VLIW)だ。これはx86系CPUのスーパースケーラ方式とはかなり異なるものだ。CPUの高速化にはいろいろな手法があるが,最も重要なのは次の2つである。

  • 1命令を実行する時間の短縮,つまり高クロック化。
  • 1クロックの間に複数の命令をできるだけ多く並列実行する。

高クロック化は素人にも直観的にわかりやすい話だ。昔のCPUは1クロックの間に1つ以下の命令しか実行できなかったので,速度を上げるには単純にクロックを上げて行くしかなかった。しかしPentium以降の新しいx86系CPUでは,1クロックの間に複数の命令を並列実行するスーパースケーラ方式に変わった。詳しい話をすると長くなるので省略するが,Pentium 4では最大6命令まで同時に実行できるようになっている。もちろん,ユーザーが作成したプログラムは命令コードが1つずつ順番に並んでいるものだ。Pentium 4ではこの並びから同時に実行できる命令の組み合わせを選び出し,可能なら並べ替えまで行って同時に実行するという非常に複雑な仕組みになっている。

一方,VLIW方式は全く異なる発想で命令を並列実行する。CPUそのものは命令の組み合わせの選択や並べ替えを一切行わない。ユーザーが作成したプログラムの方であらかじめ同時に実行できるように命令を並べておいてから,CPUに与えれば良いという考え方だ。もちろん一般のプログラマがCPUにとって最適な命令の並びまで考えてプログラミングするというのは非現実的だ。だからこの仕事はコンパイラが自動的に実行するようになっている。

VLIWの利点は,CPU側で複雑な並列化などの処理を行わなくても,スーパースケーラと同等以上の並列度が得られることだ。CPU自体があまり複雑にならないので,スーパースケーラ方式より高クロック化に向いている。もちろん良いことばかりではない。VLIWはCPUの台所事情を直接見せているようなものなので,将来的なCPUの改良でプログラムのバイナリ互換性が失われてしまうリスクがあるのだ。

このため,VLIW方式のCPUはなかなか実用化されなかった。最初にコンシューマー製品として実用化されたのは1999年に発売されたPlaystation 2のCPUであるEmotion Engine(EE)だと思われる。もちろんEEでは内部で使用するベクトル演算ユニットにVLIWを採用しただけで,汎用のVLIW方式CPUとは言い難い。またあくまで閉じた世界であるゲーム機のCPUなので,将来的な互換性をそれほど気にする必要もなかった。

その後,2000年にTransmetaのCrusoeが登場する。これは本格的な汎用VLIW方式CPUであり,同時に面白い発想でVLIWの欠点を克服している。x86命令セットをソフトウェアでネイティブなVLIW命令に逐次変換して実行し,ユーザーにはネイティブなVLIW命令セットは一切見せないというものだ。このため,CPUの物理的な改良によってVLIW命令セットのレベルでは互換性が失われても,命令の変換を実行するコードモーフィングソフトウェアで違いを吸収してしまい,ユーザーから見たx86命令セットのレベルでのバイナリ互換性は維持できる。

Crusoe自体は単なる低消費電力CPUと思われがちだが,実はここに将来的なブレークスルーとなる可能性が存在している。もちろん今のCrusoeや後継のEfficionは単純な速度性能ではPentium 4に遠く及ばない。しかしこれが高クロック化されていけば話は変わってくる。ハードウェアがPentium 4よりはるかに単純なVLIW方式なら,Pentium 4の数倍の高クロックでの動作が可能になるかもしれない。もしそれが実現できれば,コード変換のデメリットを補っておつりが来る。現在intelはあの手この手でPentium 4の高クロック化を行っているが,近いうちに限界が来ると見られている。その時に代わりとなりうる技術としてこのCrusoe方式が注目されているのだ。

実際intel自身もポストPentium 4となる新CPUについてはさまざまな角度から研究を重ねているはずで,その研究対象の一つにこのCrusoe方式が入っているのは間違いない。現に最近になってItaniumにx86命令セットをソフトウェアエミュレーションで実行する方式(IA-32 Execution Layer)を導入している。

Itaniumは元々x86命令セットを実行する32bit CPUと,ネイティブなIA-64命令セットを実行する64bit CPUが同居した構造になっていた。本来の計画ではItaniumを最初から高クロックで投入することで,既存のx86系CPUの最高性能のものより上位のCPUとして提供するつもりだったようだ。つまり最高性能のx86系32bit CPUにオマケで64bit CPUが付いてくるという形にできれば,ハイエンドなサーバー等からスムーズに移行できるというわけだ。

だが現実にはItaniumの開発は遅れ,その間にAMDとの競争が激化して,既存のx86系CPU(Pentium 3/Pentium 4)の性能は急激に向上して行くことになった。この結果,Itaniumの内蔵する32bit CPUはPentium 3/Pentium 4と比べてもかなり性能の低い,使い物にならないレベルの物に成り下がってしまった。もはや盲腸でしか無くなっているのだ。ItaniumにIA-32 Execution Layerを導入したのは,この盲腸よりもエミュレーションの方がまだ性能が稼げるという結論でもある。

しかしエミュレーションで良いのであれば何もItaniumを使う必然性は無い。PowerPCでもSPARCでもx86命令のエミュレーションは可能なわけで,これら一般のCPUとどこが違うんだという話になってしまう。実際,Itaniumの地位は当面そうならざるを得ないだろう。今後しばらくはサーバーやワークステーションの専用CPUとして扱われ,パソコンのCPUのカテゴリーには入って来ない。

とはいえ,ポストPentium 4の世代でCrusoe方式が最善という結論になった場合,そのベースとして使われるのはItaniumの子孫である可能性が高い。そういう意味ではintelは諦めずにしつこくItaniumの開発を続けていくと考えられる。はたしてItaniumはPentium 5として復活できるのだろうか。数年後が楽しみだ。

2004/02/22 (日) bookmark スキー

先月に続いて再び岩原へスキーに行ってきた。前回は豪雪に見舞われたが,今回は3日間,快晴に恵まれた。というか恵まれすぎだ。(笑)

ゲレンデの気温は15℃ぐらいまで上がるし,とにかく暑かった。4月下旬の気温だという話だ。昼頃には雪がドロドロのシャーベットになってロクに滑れない。仕方がないので2日めと3日めは早朝からスキーして早めに上がるという選択をした。長年岩原に通っているが,2日とも早朝スキーをしたのは初めての経験だ。

今回はbataさん主宰の恒例のツアーで,総勢9名の参加となった。楽しいツアーだった。

2004/02/24 (火) bookmark 池袋聘珍樓

池袋聘珍樓で夕食。ランチは何度も食べているがディナーは2回目だ。今回は「富貴之筵」という10,000円のコースを選んだ。料理長のおすすめコースということで,Webサイトにも詳しい内容が載っていないものだ。メニューを貰ってくるのを忘れたので詳しくは書けないが,「大海老の苺マヨネーズ和え」がなかなか面白かった。揚げた海老をマヨネーズで和えたものは中華の定番だが,このマヨネーズに苺が混ぜてある。ちょっと甘くなってしまうのだが,絶妙の美味しさだ。北京ダックや干し鮑を使った料理もなかなか旨かった。デザートはこのコースからは2種類付くようだ。杏仁豆腐はいつものメロンに加えて苺が入っていた。もう一つのデザートは黒ゴマの汁粉仕立てという珍しいものだった。

接待モードだったのでリラックスして料理を楽しむという感じにはなかなかならなかったが,それでも非常に美味しかった。

2004/02/25 (水) bookmark Yahoo! BB顧客情報流出事件

なんとまあ,とんでもない事件だ。460万人の個人情報が流出ですか。

最初は対岸の火事かなと思っていたが,よく考えると僕は2001年にYahoo! BBのADSLサービスに申込みをしたことがある。その時は結局対応の酷さに呆れてキャンセルしたのだが,今回の流出した情報にその時の僕の個人情報が含まれている可能性は否定できないじゃないか。

もちろんソフトバンクBB側は,今回流出した情報には退会者の情報は含まれていないと主張している。しかしこの言葉を信じられる根拠はない。数年経った今になってこんな心配をしなくてはならないとはね…。やれやれ。

とりあえず現時点で判明している事実を整理すると次のようになる。

  • 460万人規模の個人情報が流出した。
  • 流出した個人情報は少なくとも警察当局には確実に渡っている。
  • 逮捕者が入手したルートから別の第三者にも流れている可能性が高い。

また,ソフトバンクBB側は次のような主張をしている。

  • クレジットカードの情報は含まれていない。
  • 退会者の情報は含まれていない。
  • Yahoo!の他のサービスの個人情報は含まれていない。

杜撰な管理をしていた連中の発言を額面通りに受け取るのは難しいものがあるよねえ。

2004/02/26 (木) bookmark 福ちゃん

久々に渋谷の福ちゃんで宴会。手酌王とmomo3,ひらりん,myuuさんの参加。5人でカンパチの刺身や,鰤カマ焼き,ぼたん海老などの海鮮類をたらふく食べた。ぼたん海老の鮮度はイマイチだったな。

2004/02/28 (土) bookmark カニ成敗

以前からの懸案だったカニを食いに行こうということで,検索したらホテルニューオータニの中華レストランBLUE SKYでカニ食い放題のヴァイキングをやっているのを見つけた。ランチなら3500円と手頃なのでひらりん,myuuさんと3人で食べに行った。

この店はニューオータニのザ・メイン棟の最上階(17階)にある展望レストランだ。客席がドーナツ状の構造になっていて1時間近くかけてゆっくり回転する仕組みなので,食べながら都内の風景を一望できるという趣向になっている。ヴァイキングの料理は客席の内側の回転しない部分にあるため,料理を取りに行って戻ろうとすると自席がすでに遠くに移動していたりしてなかなか面白い。

肝心のカニはタラバガニをゆでたものが沢山置いてあり,オニオンソースで食べるようになっていた。食べやすいように上手く切ってあったし,そこそこ美味しかった。しかし他の中華料理,特に黒酢を使った酢豚や熱々の五目おこげが素晴らしく旨かったので,カニの印象は薄くなってしまった。何のためにここに来たんだか。でも旨かったからいいか。(笑)

2004/02/29 (日) bookmark 個人情報は500円

Yahoo! BBから流出した個人情報だが,結局退会者の情報も含まれていたそうだ。お詫びとして対象となった全員に500円の金券を送るそうだが,これも何だかなあ。個人情報の価値はたった500円でしかないんですか。

確かに全員に何万円も配ってたら会社が潰れてしまうという理屈は分かる。でもそれならこんなハンパなことをするよりもっと他にやるべきことがあるんじゃないかね。最低でも希望する者には登録されている個人情報の完全抹消を保証するべきじゃないだろうか。小銭をばらまいて謝るなんて子供だましよりも,よほど重要だと思うのだが。


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