11月末に
東京めたりっく通信のADSL常時接続環境を拙宅に導入することができましたので,使用感その他をレポートしてみたいと思います。
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従来型の音声電話線(銅線)を使って高速データ通信を行う技術を総称してxDSLと呼びます。細かい方式の違いによってADSL, SDSL, HDSLなどいろいろな種類があります。技術的には数Mbpsの速度まで実現可能であると言われています。
ADSLを実現するためには,電話局側とユーザー宅側の双方に専用の装置(ADSLモデム)が必要になります。また,その間の電話線が光ファイバー化されていないことが条件になります。それ以外に電話線自体の品質や周囲の環境も問題になってきますので,最終的にはやってみないとわからないという面もあります。
ADSLによる通信は音声より高い周波数の信号を使いますので,1本の回線を音声通話と共有して
同時に使うことが可能です。音声は従来通り使った時間だけ課金される普通の電話として使え,ADSLによるデータ通信は常時接続となります。もちろんADSLの技術そのものは常時接続であるかどうかとは関係ありませんが,現実に提供されているサービスはほとんどが常時接続になっているようです。
ユーザーにとっては従来の音声電話はそのままいつでも使える状態で残っており,それに加えてデータ通信用の専用線が丸ごと1本増えたように見えます。1本の回線を2回線分として使うことが可能という意味ではISDNと同じですが,2回線それぞれを音声/データ通信のどちらにも使うことができるISDNのような自由度はありません。その代わり
ISDNの10倍の速度が手に入るわけです。
前述のように導入には電話局との間に光ファイバーが一切入っていないことが条件になります。これはNTTの下記Webサイトでチェック可能ですが,最終的にはNTT内にある
個別の資料を調べてもらわないと正確なことはわからないようです。
実際,拙宅もこれらのWebサイトのチェックでは
すでに光ファイバー導入済みでADSLは不可能ということになっていました。
やはり最も気になるのは,実際に使った時の実効速度だと思います。私が契約したのは
Single640というサービスで,最大速度は下り640kbps/上り250kbpsというスペックです。ftpやhttpでいくつかのサーバー相手に計測してみましたが,実効速度は大雑把に言ってだいたい次のような感じでした。
- 下り: 500〜640kbps (62〜80KB/sec.)
- 上り: 230〜240kbps (28〜30KB/sec.)
元々帯域保証型のサービスではありませんのでカタログスペックの半分も出れば御の字と思っていたのですが,
予想外に高い性能が出ています。時間帯や接続先の負荷などの条件がそろえば640kbpsのフルスピードが出ることもあります。まだ3週間しか使っていませんが,今のところワーストケースでも500kbpsを下回ることは無いという感じで,なかなか優秀です。
これは拙宅が電話局から200メートルぐらいしか離れておらず,条件が良いということも一因としてあるようです。もちろん今後もこの性能が維持されるのかどうかはわかりませんが,とりあえずなかなか快適な環境になりました。
勤務先の会社ではもっと太い専用線を引いていますが,数百人で共用しているため一人で使う自宅のADSLの方が速く感じるケースも多くなっています。
ADSLサービスを行う接続業者は,電話局とユーザー宅の間の電話線をNTTから間借りする形でサービスを行います。具体的には,電話局側とユーザー宅側にそれぞれADSLモデムを設置して接続できるようにし,さらに電話局からインターネットへの接続も提供します。
接続業者には,自前でISP(インターネット サービス プロバイダ)としての機能も兼ねている業者と,ISP機能は持たずに別のISPと連携してサービスを行う業者があります。前者には
東京めたりっく通信など,後者には
イー・アクセスなどがあります。ユーザーはNTTと接続業者の両方にそれぞれ使用料金を支払いますが,後者のタイプの業者の場合はさらに別途ISPにも使用料金を支払うことになります(もちろん総額で高いか安いかということは一概には言えません)。
また,NTT自身も
フレッツADSLという名称でADSLサービスの提供を12月末から開始するようです。これは外部のISPと提携するイー・アクセス型のサービスになります。
どの業者を選択するのが良いのかというのは大変難しい問題です。というのも,毎週のように新しい発表があり,刻々と状況が変化しているからです。現時点では1.5Mbpsのサービスを毎月4800円で提供しようとしているフレッツADSLが,他の業者のサービスよりかなりコストパフォーマンスが良さそうだと言えます。しかし必然的に他の業者も値下げしてくることが考えられ,状況は予断を許しません。
また,今はどの業者にも申し込みが殺到している状況で,例えば東京めたりっくは開局日から手続きの開始までに
最大40営業日(つまり2カ月)かかりますと発表している始末です。こういう状況では割安な業者を選んで申し込んでも,待ってる間に他社が料金値下げするなどといった事も起こりかねません。
結局のところ,各社に同時に申し込んで
一番対応が早かった所にするというのが賢いやり方なのかもしれません。
私が東京めたりっくに申し込んだのは9月の始めです。当時はあまり詳しい状況は把握していなかったため,他の業者と比較検討することなく申し込んでしまったのですが,とりあえず申し込みが殺到する直前に滑り込めたのは幸運でした。それでも結局開通したのは練馬の開局日である10/25からさらに1カ月後でしたが。
東京めたりっくにもいろいろなサービスメニューがあります。詳しい内容は同社のWebサイトをご覧いただいた方が良いと思いますが,この中で私は一番安いADSL Single640にしました。これは最大速度が下り640kbps/上り250kbpsで,PCを1台だけ接続できるというスペックです。IPアドレスはグローバルアドレスの動的割り当てになります。
Single640は初期費用が27000円,毎月の利用料が5500円です。この他にNTTの回線利用料が毎月800円かかりますが,これは先日NTTが
410円への値下げを郵政大臣に認可申請し,電気通信審議会が
187円にしなさいと答申しています。
安くなるのはユーザーにとっては歓迎すべきことなのでしょうが,こういう料金をお役所が決めることになっている会社が,加入者線を独占した上で一般の接続業者と同じ土俵で競争するという状況にはいろんな意味で矛盾を感じますね。
音声電話と回線を共用する場合,音声側の基本料金や通話料も別途かかりますが,これは既存の回線を使うのなら新規に増える費用ではありません。東京めたりっくは一応ISPを兼ねていますので,他のISPを使わないのであればこれ以上の料金はかかりません。ただし一般的なISPと比較して見た場合,機能的にはかなり貧弱です。[^^;]
初期費用というのは工事や各種手続きのコストということになっていますが,実際にはADSLモデムのコストが多くを占めていると思われます。形式上はADSLモデムは買い取りではなくリースということになっています。
月額はトータルで見るとフレッツISDN+ASAHIネットの組み合わせよりは少し高くなります。その代わり最高10倍の速度が得られるわけで,コストパフォーマンスではかなり優れていると言えます。
以下は申し込みから開通に至るまでの経緯です。これは単に私の場合こうだったというだけで,常に同じような期間で導入できるという意味ではありませんので注意してください。
2000/09/03 |
東京めたりっくがサービスを開始するという話を聞き,Webサイトを見て検討する。私の住む練馬は10/25開局ということなので,なかなか進展しないフレッツISDNには見切りをつけてこちらを申し込むことに決めた。
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2000/09/04 |
「申し込みの確認」のメールが来る。その後ずっと音沙汰なし。
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2000/09/28 |
「お待たせして申し訳ございません」というだけのメールが来る。その後はまた音沙汰なし。
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2000/10/25 |
練馬の「開局日」のはず。何かあるかと期待したが何も音沙汰なし。
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2000/11/01 |
回線の調査を開始するというメールが来た。どうやら開局日というのは調査を開始する日ということらしい。[^^;]
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2000/11/13 |
NTTに依頼した机上の回線調査が終了したという連絡があった。
光ファイバー化はされておらずADSLを導入できそうだとのこと。
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2000/11/14 |
NTT局内の工事を11/22に行うというメールが来た。ユーザー宅側の工事を11/24以降の平日に行うので希望する日時を連絡しろとも書かれていた。すぐに返信で希望日時(11/28)を伝える。ようやく先が見えてきた。
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2000/11/20 |
希望通り11/28に工事を行うというメールが来る。
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2000/11/22 |
「めるまがめたりっく」というメールマガジンが初めて来た。接続の申し込み時に一緒に申し込んでいたのに全然来ないからどうしたのかと思っていたが,ほとんど休刊状態だったらしい。(笑)
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2000/11/23 |
安物NICを買ってきて準備する。
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2000/11/28 |
宅内工事に担当の人が来た。無事終了し,昼には接続開始できた。
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以上のように,開局日から実際の開通までには約1カ月かかりました。最後の宅内工事の前日には確認の電話が来ましたが,それ以外のやりとりはすべて電子メールでした。
宅内工事は実際には次のようなものでした。
- 電話コンセントにスプリッタを接続し,ADSLモデムと電話機に配線を分配。
- 電話が正常に使えることを確認。
- 担当者が持参したノートPCにADSLモデムを接続し,接続と実際の転送速度を確認。
- 特に問題ないので工事終了。
つまりあくまでADSLモデムが正常動作している事を確認するだけで,実際にユーザーのPCへの接続は自分でやりなさいということのようです。私は一応ネットワークエンジニアですのでむしろ自分でやる方がいいんですが,一般の人は少し大変かもしれませんね。まあ確かにPCへの接続まで面倒見ていたらドツボにはまる可能性がありますし,やむを得ないんでしょうが…。
PCのセットアップは次のような手順でした。
- 10BASE-T対応のNICをPCに入れてドライバとTCP/IPをセットアップしておく。私は1600円ほどで売っていた安物NIC(NETGEAR製)を使用。
- ADSLモデムとNICを接続し,ADSLモデムとPCの電源を入れる。
- OSの起動後に,ADSLモデムと一緒に届いた接続ソフトをインストールする。
- 接続ソフトを起動し,ユーザーIDとパスワードを入力して接続する。
基本的にはこれだけで,PCのネットワーク設定に慣れている人なら簡単な作業です。接続は単純なDHCPではなくPPPoE(PPP over Ethernet)という方式で行われます。
これは仮想的なNICがもう一枚入っているように見え,その仮想NICから本物のNICを呼び出して使うという構造になるようです。仮想的なNICはDHCPに設定しておき,接続時にグローバルIPアドレスが自動的に割り当てられます。本物のNIC側のIPアドレスは何でも良いようで,DHCPにしないで任意の固定アドレスを与えておいた方が起動が速くなるとマニュアルに書かれていました。
なお,ADSLモデムは
米ARESCOM社の
NetDSL880というブリッジタイプの機種です。今のところ一般には市販されていないようです。同社のWebサイトにはこの型番の機種は載っていませんので,日本向けの特別仕様なのかもしれません。
めでたく開通したのはいいんですが,ISPとしてのメールやWWWサーバーなどのサービスはどうすれば使えるのか当初はさっぱりわかりませんでした。[^^;]
宅内工事の担当者が持ってきたのは,モデムと接続ソフトの説明書以外には接続用のIDとパスワードが書かれた紙だけで,メール等の説明はどこにもありません。担当者に聞けば良かったのですが,その時はまさか
ISPサービスの説明書が入っていないとは思わなかったので聞きませんでした。[^^;]
仕方がないので翌日サポートに問い合わせのメールを送ったのですが,すぐには返事がありません(これは結局
ずっと返事がありません)。しかし帰宅すると郵便ポストに東京めたりっくからの手紙が入っていて,この手紙にメールやWWWサーバーを使うための情報が書かれていました。
なるほどこういうやり方なんですね。しかしそれならそれで事前に説明して欲しいです。この件に限らず,この会社はどうも
全体的にユーザーへの説明が不足している気がします。新しい会社でまだユーザー対応のノウハウが蓄積されていないということなんでしょうね。他のADSL接続業者と比較してどうなのかはわかりませんが…。
ISPとしてのサービスですが,メールスプールもWWWサーバースペースも
わずか2MBしかありません。もちろん増量は可能ですが,追加料金(どちらも1MB追加ごとに月額50円)が発生します。その他のサービスとしてはNewsがありますが,これは「alt.*」を除いて配信だそうです。まあこれは資源の有効利用という意味では正しいか。(笑)
メーリングリストといった副次的なサービスも一切ありませんし,一般的なISPに比べるとかなり寂しい内容であると言えます。個人的にはISPとしてのサービスには何も期待していなかったのでどうでもいいんですが…。今ご覧いただいているこのWebサイトも東京めたりっくのサーバーは使用していません。
それよりも
トラブルの発生率が高そうなのが少し気になりますね。まさか導入初日(11/28深夜)からいきなりダウンするとは思いませんでした。[^^;] もっとも,その後3週間ほど経ちましたが,この間には特に大きなトラブルには遭遇はしていません。
11/30の早朝には某サーバーから
1900MBほどのデータのダウンロードを試してみましたが,無事に7時間弱で終了しています。